持ち上がる疑惑の数々
トランプ大統領に迫る捜査の筆頭はなんといっても、大統領選挙をめぐってトランプ陣営がロシアと共謀したというロシアゲートだ。その捜査のもみ消しを図った司法妨害も対象である。
米メディなどによると、2015年から16年の末までにトランプ陣営の関係者24人以上がロシア側と接触した。接触が急増したのは2016年の春と夏に集中しており、これはトランプ氏が共和党の大統領候補になることが確実になった時期と重なっている。
この事件では、33人がすでに起訴されたが、うち26人はロシア人。トランプ陣営で起訴されたのは、ポール・マナフォート元選対本部長、リック・ゲイツ元副本部長、マイケル・フリン元大統領補佐官(国家安全保障)、ジョージ・パパドポロス元外交顧問、マイケル・コーエン元顧問弁護士。だが、捜査を主導するモラー特別検察官はロシアとの共謀容疑についてまだ結論を出しておらず、大統領の関与も明確になっていない。
ニューヨーク連邦検察によるトランプ氏の不倫疑惑捜査も大詰めだ。トランプ氏側は大統領選挙の直前、口止め料として不倫相手だったモデルのカレン・マクドゥーガルさん、ポルノ女優のストミー・ダニエルズさんの2人に約30万ドルを支払っているが、これが選挙法違反に問われた。
トランプ大統領の汚れ仕事を請け負ってきた元顧問弁護士のコーエン氏は法廷で、トランプ氏の指示で口止め料を支払ったことを認め、大統領は「すべてを知っていたのに、嘘をつき続けている」と暴露した。コーエン氏は禁錮3年の判決を受け、来年3月から服役することになった。
トランプ大統領はツイッターで「一切指示などしていない。コーエンが独断でやった。彼こそ嘘つき。私に恥をかかせるために捜査に協力した」と罵った。しかし、大統領の発言は信頼性に欠ける。なぜなら、不倫問題が明るみに出た当初は「知らない」と否定したのに、その後は「選挙と関係ない私的な合意」と関与を仄めかすなど、新事実が暴露されるたびに弁明をクルクルと変えているからだ。
このほか、17年1月20日の大統領就任式の実行委員会がウクライナの政治家から違法な献金を受け、不正な支出もしていたという疑惑や、トランプ一族の慈善団体を隠れ蓑にした不法行為、トランプ大統領自身の脱税疑惑なども次々に表面化。「トランプ氏が率いてきたほとんどすべての組織が捜査対象」(ワシントン・ポスト)という異常な状況になっている。
1月から始まる議会は下院多数派が民主党に代わり、大統領の数々の疑惑の調査に動き出すのは必至。弾劾手続きも視野に入れている。大統領は政府閉鎖の期限である21日、16日間のクリスマス休暇に向かうが、例年とは違う休暇になることだけは間違いあるまい。
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