2024年11月25日(月)

WEDGE REPORT

2018年12月27日

世界各地の軍撤退の序章か

 トランプ大統領はメキシコ国境の壁建設費をめぐる民主党との対立で政府機関が閉鎖されたあおりを食い、フロリダでのクリスマス休暇をキャンセルし、ホワイトハウスに留まることを余儀なくされている。こうした不満が爆発したのか、24日のクリスマスイブには「ひとりぼっちで、かわいそうな私」などとつぶやき、トランプ砲を連発した。

 マティス氏にも批判の矛先を向け、「彼は米国が豊かな国の軍隊を援助しているのを問題視しなかった」とツイート、米国が同盟国に利用されているという持論を展開した。さらに、マティス氏に続いてシリア撤退方針に抗議して辞表を提出したマクガーク有志連合大統領特使に対しても「あのひどいイラン核合意に携わった人物だ」と当たり散らした。

 心配されているのは、マティス氏の辞任を追って軍の幹部の辞任が相次ぐのではないかという点だ。特にマティス氏と親しいマーク・エスパー陸軍長官、ヒーザー・ウイルソン空軍長官、リチャード・スペンサー海軍長官の名前が取りざたされている。軍の指導部が辞任するようなことがあれば、前代未聞の出来事になるだろう。

 トランプ氏が国防長官代行に指名したシャナハン副長官は航空宇宙大手ボーイングの元副社長。昨年7月に国防副長官に就任し、ペンタゴンをより効率的に運営することを重視してきた。制服組が反対する中、トランプ氏が提唱した宇宙軍創設に諸手を挙げて賛同し、大統領の覚えがめでたい人物でもある。制服組との対立がささやかれており、軍指導部に混乱が生じる恐れがある。

 同盟国として懸念されるのは、マティス氏辞任の引き金になったシリアからの撤退、アフガニスタン駐留軍の半減という決定が、世界各地に駐留する米軍撤収の「序章にすぎないのではないか」(ニューヨーク・タイムズ)という点だ。

 トランプ大統領は軍事費の公平負担などが是正されなければ、NATOや日本、韓国から撤退するなどと恫喝してきたが、それが現実になるかもしれない。とりわけ米朝協議が進展し、北朝鮮の非核化がより鮮明になれば、トランプ大統領が同盟国の意向を無視することは十分あり得ることだ。そういう意味でも、年明けの米朝首脳会談が重要になる。

 ピュリッツアー賞を3回受賞した筆者の畏友、著名なコラムニストのトーマス・フリードマン氏は24日付のニューヨーク・タイムズへの寄稿で、トランプ大統領がいかに歴史や米国の重要性に無知なのか、マティス氏の辞表に書かれている通り明白だと断じ、与党共和党に対し、大統領の行いを改めさせるよう辞任勧告を検討するよう呼び掛けた。

  
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