「コツコツ丁寧に取り組む」仕事が得意
――高校卒業後の、知的障害のある卒業生たちの主な就労先はどういった職種になりますか。
天宮:まず挙げられるのは特例子会社を持っている企業さんです(特例子会社とは、企業が障害者の雇用を促進する目的で作る子会社で障害者に特別に配慮されている)。
あとは大手スーパーに就職して店舗で品出しをしたり、中にはレジを担当している人もいます。また、特性によりますがパソコンを使った業務に従事している卒業生もいます。
軽度の方の業種で多いのはやはり清掃関係です。一例ですが障害のある人たちを雇用してグループで清掃作業に従事していたり、高齢者施設のお部屋の掃除や風呂、トイレや洗濯場などの水回りの清掃ですね。
個性によっては、小さな汚れも気になりますから見落とすことがありません。それに汚れをまったくいとわず綺麗に仕上げるので評価は高くとても喜ばれています。彼らはちょっとくらいさぼってもいいかな、なんて考えることもありません。とにかくコツコツ丁寧に取り組んでいます。
その他の就労先としては福祉作業所を利用される方も多いです。
企業の障害者雇用促進法によって雇用率が高まったことでいろいろな企業から声が掛かるようになり、今までは就職できなかった企業に就職するケースが増えてきています。
ただ、そこにも問題がないわけではないんです。
――問題点として具体的にはどんな点が挙げられますか。
天宮:法定雇用率を達成し、違反金を払わないための数字合わせで障がい者であれば誰でもいいという考え方です。
実習を経て企業に障がいの特性を理解していただいたうえで就職するのですが、現場ではその障がいが理解されておらず、「この人なにか変だよ」とか「これでお給料もらっているのか」と周囲から非難されてしまうこともあるようです。
知的障がいは身体的障がいと違って一見しただけではわかりづらく、自閉症スペクトラムの中にもADHDやLDなどがあって、それぞれの特性は一般的にはまだまだ理解されていません。
自閉症は言葉の発達の遅れやコミュニケーションの障害、対人関係・社会性の障害、パターン化した行動、こだわりがあり、言葉の遅れはないものの上記特性を有するアスペルガー症候群。不注意、多動・多弁、衝動的に行動するAD/HD(注意欠陥多動性障害)や読む、書く、計算するなどの能力が全体的な知的発達に比べて極端に苦手とするLD(学習障害)などが発達障害の一例として挙げられているので参考として一部引用。
たとえば、「この大根を3分の1に切って」と頼まれたときに、その3分の1が理解できなくて、半分に切ってしまったり、簡単な九九の計算ができなかったり、また、レジ打ちができるような高機能自閉症(アスペルガー症候群)の場合は周りとコミュニケーションは取れるのですが、何かひとつ、たとえば小さな物音が気になりだしたりすると、過敏に反応して、それが気になってイライラして何も手につかなくなってしまうようなケースもあります。
一見してわかりづらいので、たださぼっていると見られてしまい周囲との摩擦の原因になりやすいと言えます。
多くの場合、身体障がいの人たちは自分の言葉でできることとできないことが伝えられますが、知的障がいの人たちはそれができなかったり、できないことがわからない場合もあります。
これも一例ですが、職場のパートさんに頼まれ勤務日を代わって、その埋め合わせがなかったことがありました。
私たちが「あれ、今月お休みの日が少ないんじゃないの?」と気づいて聞いてみると、「〇〇さんとお休みの日を代わりました」と答えるんです。それで職場の担当者に問い合わせをしたところ、どうやらそういった背景があったことがわかりました。
この場合、本人はどこがおかしいのか理解していなかったため、周囲の人がフォローしてあげなければ問題は見つかりません。