2022年6月27日(月)

さよなら「貧農史観」

2011年9月15日

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昆 吉則 (こん・きちのり)

『農業経営者』編集長

1949年神奈川県生まれ。農機業界誌編集を経て、87年に株式会社農業技術通信社設立。93年に日本初の農業ビジネス誌『農業経営者』を発刊。

日本の農機メーカーにも変化が

 その一方で、日本国内では、規模の拡大だけでなく、より低コスト生産が実現できる条件が整ってきている。

 クボタやヤンマーなどの日本の農業機械メーカーは中国で1年間の使用時間を2000時間程度に想定したコンバインを現地生産している。一方、日本国内で販売されるコンバインの年間の想定使用時間は200時間程度である。この背景には、我が国の農機メーカーがこれまで、産業機械というより兼業を続けるための機械化要求に応え、やがては趣味化したコメ農家に向けたいわば民生機械ともいうべき稲作機械を供給するのが仕事だったことに起因している。国内のユーザーのほとんどは兼業で小規模なコメ生産者であり、彼らの使用時間は多くても年間数十時間程度だからである。

 だが、流れが変わり始めた。クボタは年間700時間まで特別なメンテナンスを必要としないコンバインの販売を昨年から開始。数年後には中国等と同じ年間2000時間の耐久性を持ち、日本の農業経営者のニーズを満たしたアジア共通仕様のものを発売すると発表している。 国内の農家に追い風が吹く中、すでに低コスト化農業に取り組む「農業経営者」も出始めている。筆者らが主催した農業・農村を核としたビジネスモデルコンテスト「A−1グランプリ2011」で農業経営者賞を受賞した成田康平さん(36歳・ナリミツ農園・青森県藤崎町)は、カリフォルニア米に対して競争力の持てる「1俵(60キロ)7000円で利益を出す米づくり」というテーマで発表を行った。乾田直播という代掻きや田植えをしない稲作技術と規模の拡大、土の力を活かした増収などにより、1俵7000円どころかそれ以下のコストで米生産が可能になると言うのだ。規模の拡大以上に土作りすることによって増収というコストダウンが果たせると言う。しかも肥料や農薬の使用量も一般農家よりはるかに少ない。成田さんは現在35ヘクタールの経営だが、離農が進み100ヘクタール規模の生産は数年で可能になると言う。

 日本のコメ農家は、「高品質」という競争力を持っている。それは品種だけでなく良食味生産に適した風土や機械化に伴う適正な土作りや栽培管理によって実現しているのだ。加えて、農機メーカーの変革も農業経営者にとっては大きな力となるだろう。つまり自由化しても日本のコメは外国産に負けないということだ。

◆WEDGE2011年9月号より



 

  


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