この熱き人々

2019年2月25日

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吉永みち子 (よしながみちこ)

1950年、埼玉県生まれ。85年、『気がつけば騎手の女房』で大宅壮一ノンフィクション大賞を受賞。著書に『母と娘の40年戦争』(集英社文庫)、『怖いもの知らずの女たち』(山と溪谷社)、『試練は女のダイヤモンド』(ウェッジ)などがある。

 10年間勤めた卯辰山工芸工房を辞め、金沢市内にガラスデザインと制作を一貫して手掛ける工房「factory zoomer」を設立。迷える辻の道しるべになっためんちょこは、大ヒット商品になった。2010年から16年まで金沢で展開された「生活工芸プロジェクト」ではディレクターを務め、その実験店舗として地元の若手作家や全国のギャラリーや雑貨店が30日、90日と期間を定めて出店する「モノトヒト」も主導。二足どころか三足四足ものワラジを全力で履いた。当初はガラス作家、美術家、ギャラリーオーナー、ガラス制作工房主宰などさまざまな肩書を持っていたが、いまはシンプルに、ガラス作家だけで十分だという。長い旅路を経て、やっと求める核にたどり着いたということなのだろう。

広坂通りに面したfactory zoomer/gallery

 現在、生活のハレの場としての広坂のギャラリーと、ケの場としての犀川(さいがわ)沿いのショップとを両輪で運営。市郊外の丘の上には工房。そこでは、間近に迫った台湾での展覧会の準備が進められていた。

 1200度の溶解炉の前に立つ辻は、ギャラリーやショップにいるときとはガラッと印象が変わる。サングラスで目を守り熱と対峙するその姿は、男前でたくましくてかっこいい。日本画か商業デザインか、アートか工芸か、現代美術か生活工芸か。すべてを自らの熱で溶け合わせながら、新たな挑戦の形を生み出していく。赤い炎に照らされた辻が、何やらガラスそのもののように思えてきた。   

南谷真鈴(みなみやまりん)。21歳。早稲田大学政治経済学部2年。ウエービーなロングヘアにコーラルピンクのウインドブレーカーのスポーティーな装いが、都心の公園の緑に華やかに映える。この若い女性が、日本人最年少の19歳でエベレスト登頂に成功し、その2カ月後に日本人最年少、女性では世界最年少で7大陸最高峰登頂も達成、さらに南極点、北極点到達を加えた探険家グランドスラムを世界最年少の20歳で達成したと聞いたら、道行く人はどんな反応を示すのだろうか……。偉業を知っていてさえ、記録達成までの過酷さと目の前の都会的な雰囲気の漂う女子大生の間の落差を乗り越えないと、南谷真鈴の像が結べないよ
つじ かずみ◉1964年、石川県生まれ。金沢美術工芸大学卒業後、カリフォルニア美術工芸大学で吹きガラスを学ぶ。金沢卯辰山工芸工房勤務を経て90年に独立。ガラス作家としての活動の傍ら、金沢市内でギャラリーやショップを経営、生活にかかわるさまざまな提案を行っている。

石塚定人=写真

  
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◆「ひととき」2019年2月号より

 

 

 

 

 

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