2024年7月16日(火)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2019年2月4日

「クリプトナイト」の威力

 モラー特別検察官は、メールの通信履歴と内容からかなり詳細なところまでストーン被告のメール内容を把握していたことが、起訴状から読み取れます。起訴状には、人物2がストーン被告に送信したメール内容が明記されています。

 たとえば、「組織1のトップはヒラリーに対するクリプトナイトを持っている」と送っています。「クリプトナイト」は、スーパーマンの超人的能力を無力化する架空の物質です。つまり、組織1のトップはヒラリー・クリントン元国務長官に決定的な打撃を与える情報を得ていたという意味になります。

 モラー特別検察官は、ストーン被告と下院情報特別委員会で議会証言をする予定であった人物2のメール内容も捜査しています。同被告は自分の証言内容と一致させるように人物2を説得し、口裏を合わせをしていました。

 ストーン被告は、人物2とメールを通じてコミュニケーションをとっていたのにもかかわらず、電話で会話をしていたと議会に証言をしています。加えて、組織1のトップに言及したメールを所有していないと証言しました。こららのメールに関する証言は偽証でした。

トランプ陣営の「メール問題」

  偽証罪に加えて、ストーン被告は司法妨害と証人買収においても罪を問われました。ストーン被告は映画「ゴッドファーザーパート2」に登場する架空の人物フランク・ペンタンジェリを持ち出して、人物2に対してペンタジェリのように議会証言を取りやめるように促しました。

 ペンタジェリは、コルレオーネ・ファミリーの一員で、直前になってマイケル・コルレオーネを追及する証言を取りやめた人物です。ここでもストーン被告が、自分と人物2の証言の不一致を恐れていたことが理解できます。

 思えば、2016年米大統領選挙でヒラリー・クリントン元国務長官は私的なメールサーバーで公務を行った問題、いわゆる「メール問題」を選挙期間中取り上げられ、トランプ大統領からの攻撃に終始守勢に回りました。しかしこの起訴状では、ストーン氏、人物2及び組織1のトップとのメールのやり取りに捜査の焦点が当たっています。

 前回の大統領選挙では有権者に明らかになっていませんでしたが、トランプ陣営には極めて深刻な「メール問題」が存在していたわけです。


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