国境の危機と脅威の誇張
一般教書演説の第2の狙いは、米国・メキシコ国境沿いの危機と脅威を誇張し、米国民にその認識を広めることです。「国境の壁」に関するこれまでの各世論調査の結果をみますと、大抵の米国民は「国境の問題は重要だが、危機ではない」という認識を持っています。
トランプ大統領にとってさらに悪いことに、前で紹介した米上院情報特別委員会における公聴会で情報機関のトップは、米国・メキシコとの国境沿いの危機及び脅威について触れませんでした。一貫して「国境の危機」を主張しているトランプ大統領にとって、これも不都合なことになりました。
そこでトランプ大統領は2月2日、ホワイトハウスでメキシコとの国境沿いで発生している人身売買に関する会議を開催しました。中米から誘拐された子供や女性が、国境を越えて米国に入ってくる状況を国境管理の担当者や専門家に説明させ、いま国境が人道的危機に直面しているという認識を米国民に持たせようとしたのです。
一般教書演説では、人身売買に加え、薬物の流入やギャング集団における犯罪を含め、国境の危機と脅威についてアピールすることは間違いありません。