「持ち家信仰」はもう古い
「東京や大阪に住む人が『自宅を所有したい』と熱望するのは、敗戦後の住宅難の時代に萌芽し、現代まで受け継がれている偏った価値観だと考える」と持論を展開、「そもそも、持ち家でないといけない、という価値観を見直すべきだ」
と、訴える。その理由として、少子高齢化、人口減少を指摘する。
「このままだと、昔のような住宅難の時代は来そうにない。それどころか、この国がいまだに経験したことがない住宅の大余剰時代がやってくる。というか、地方ではすでにそうなっている。そのことに気づけば、マンションを購入する、というのは大きなリスクであることが見えている」
欠陥だらけの区分所有法
その最大の元凶がマンションの所有形態である区分所有制度であると主張する。
「区分所有について定められた区分所有法という法律には、決定的な欠陥があるのだ。1962年に制定された同法は、基本的に性善説に基づいているとしか思えない構造になっている。また、500戸や1000戸大規模マンションの登場を想定していない。さらに言えば、マンションの老朽化さえも想定外ではないか。これを改めない限りにおいて、すべてのマンションは廃墟化へのレールを突き進むことになる」
榊氏は、
「日本のマンションにおける区分所有権とうのは、過剰に保護されていると言えないだろうか。せめて、管理費や修繕積立金を長期にわたって滞納している住戸に対しては、もう少し厳しい制度を設けてもよいと思う。国土交通省もその必要性は気付いているはずで、その方向で見直しをしてほしい」
と述べ、管理費の滞納が5年分に達した場合、所有権がマンションの管理組合に移転するようにしてはと、具体的な提言をする。
区分所有法では、共用施設の変更には区分所有者の4分の3以上の賛成が必要な特別決議が必要になる。建て替えとなると法的には5分の4の賛成が必要だ。数十戸の小規模のマンションなら住民も顔見知りのため、合意形成も得やすいが、1000戸規模となると、外国人や賃貸契約で入居している人もいて、合意形成は煩雑で難しくなる。
「『4分の3』、『5分の4』の合意はハードルが高すぎるので、最大で『3分の2』あたりまで緩和すべきではなかろうか。マンションのような何十、何百もの世帯が生活を営む集合住宅は、たとえ所有者が個人であっても、ある程度は公共的な存在であるべきだ。
公共物であるかぎり、私人が好き勝手に扱っていいはずがない。そこでは公共物なりの常識的なルールを守り、一定の秩序が保たれるべきであろう。また必要とあれば、行政がある程度介入すべきではないだろうか。
特に廃墟化が迫っているマンションについては、区分所有者だけの力だけではどうにもならない場合が多い。そこには当然の如く行政の介入があってしかるべきであると私は考える」