悪夢の再来
トランプ大統領が米中首脳会談の日程を発表すると、下院の民主党はロシア疑惑の公聴会を会談と同じ日にぶつけてくる可能性があります。仮にそうなれば、米朝首脳会談のときと同様、議会民主党は米国民の関心を公聴会に集めることができるからです。
もし米中首脳会談の前に、ロバート・モラー特別検察官がウィリアム・バー米司法長官に最終報告書を提出した場合、下院の民主党は同検察官を召喚して公聴会を開くでしょう。
というのは、以前記事の中で触れましたが、バー長官はモラー特別検察官の捜査について過去に批判的なコメントをしているからです。民主党はバー氏が報告書を書き換えをしたり、あるいはトランプ大統領にとって不利な文章を削除するのではないかと、疑いの目でみています。そこで真実を知るために、ナドラー委員長はモラー氏の議会証言が不可欠であると考えています。
米中首脳会談とモラー公聴会が同時開催になれば、全米で生中継され、議会民主党は米国民の目先を会談から公聴会に変えることができます。民主党に心理的に揺さぶりをかけられたトランプ大統領は、習主席との会談中「心ここにあらず」の状態になります。
議会民主党がドナルド・トランプ・ジュニア氏の議会証言を会談と同日に設定すれば、これもインパクトがあるでしょう。
コーエン被告は公聴会でトランプ大統領が不倫したとされるポルノ女優ストーミー・ダニエルズ氏(本名ステファニー・クリフォード)に13万ドル(約1400万円)を自分が立て替えて「口止め料」として支払ったと証言しました。米メディアによると、コーエン被告は同被告への支払いを補填するためにトランプ大統領、ジュニア氏及びトランプ一族が経営する「トランプ・オーガニゼーション」の最高財務責任者(CFO)アレン・ワイセルバーグ氏が、署名した3枚の小切手を米議会に提示しました。ジュニア氏も「口止め料」の支払いを認識していたわけです。
加えて、トランプ大統領の「金庫番」と呼ばれているワイセルバーグ氏、クシュナー大統領上級顧問及びイバンカ大統領補佐官の議会証言が米中首脳会談と同日に開催された場合も、米国民は会談よりも公聴会に興味を抱くでしょう。
要するに、モラー特別検察官、ジュニア氏、ワイセルバーグ氏、クシュナー氏及びイバンカ氏を含めた「ビックファイブ」の公聴会を米中首脳会談と同じ日に設定できれば、ナンシー・ペロシ下院議長と公聴会を開催する委員長の勝利になります。米朝首脳会談に続き、この事態はトランプ大統領とって「悪夢の再来」です。
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