中国の経済成長率は、2018年第4四半期で6・4%(前年同期比)に減速した。しかし、問題は成長の減速ではなく、必要な改革・開放が後回しにされていることだ。習近平政権の経済運営は、経済が過熱すると改革を強調して引き締め、失速しそうになると改革を後回しにして投資増に走る、という揺れを繰り返した。
国全体の負債残高がGDP比261%とバブル期の日本並みになった背景には、景気刺激のための投資が不良債権化し、借り換えのために新しい融資資金が投じられる、という悪循環が形成されたことがある。
悪循環のスタートとなった08年の「四兆元公共投資」(当時レートで59兆円)はリーマンショック対策であり、習政権を責めることはできない。むしろ、習政権は、繰返し超過債務の整理と非効率な国有部門の改革(サプライサイド構造改革)を強調してきた。だが、景気への配慮に加え、地方政府や国有企業の投資増加要求を退けられなかったこと、また、国有部門を強化すべきとのイデオロギー的呪縛から今の苦境を招いたといえる。
実は、「一帯一路」構想の提起(13年秋)は、習政権がこうした苦境を打破し、さらに「中所得国の罠」(中所得国が先進国レベルに達するために解決すべき諸課題)を克服するため、対外開放を先行させて改革を再起動しようとした試みともみなせる。投資の量的拡大に依存せずに成長するには、海外投資の拡大や海外技術導入の推進による投資効率向上が必要である。また、対外開放に伴い規制緩和を進めることで、効率的民営部門が国有部門を淘汰する形で経済構造の改革が可能となる。
予想外だったのは、米中摩擦の発生であろう。その後、摩擦の主戦場は技術覇権争いに移り、習政権が産業高度化の指針としている「中国製造2025」の放棄を迫られている。しかし、「中所得国の罠」突破のためにも同指針の放棄はありえないだろう。中国経済は進退両難の立場に置かれている。
19年入り後に開催された経済諸官庁(人民銀行、国家発展改革委員会、財政部)の会議では、「金融・財政的手段の動員で景気を下支えしつつ」、「製造業を高度化し、国内市場を育成する」との基本方針が確認された。日本企業は、方針の後半部分に商機を見出していくことが求められるだろう。
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