捜査は税金の無駄遣い
大統領は28日にミシガン州グランド・ラピッズで「米国を再び偉大に」集会に登場し、ロシアゲートの“無罪放免”を受けて勝利宣言し、20年の再選に向けて大きく踏み出す考えだ。その一方で、自分を苦しめてきた敵対勢力への報復にも乗り出す構え。
大統領はワシントン帰任前の発言で「捜査で多くの人間がひどく傷ついた」「誰かが相手側も調べてほしい」「相手側では多くのひどいことが起きた」などと攻撃のトーンを高めた。大統領はこの“相手側”が誰かについては言及していないが、司法省やFBI、“影の政府”と批判するヒラリー・クリントン氏らを差しているものと見られる。
ワシントン・ポストによると、大統領の当面の攻撃の標的は具体的には、モラー特別検察官チーム、事情聴取などで大統領に不都合な情報を漏らした元当局者や元側近、大統領の疑惑を暴き立ててきたメディアの3つだ。特に、かねてより税金の無駄遣いと批判してきた特別検察官の捜査費用を取り上げていくのは間違いないだろう。
共和党全国委員会は捜査費用について、1日5万230ドルを675日間も浪費したと具体的に発表した。またトランプ再選本部は「共謀でっち上げ」と名付けたビデオを公表するなど、報告書の結果が新鮮なうちに政治的に利用しようと迅速に動いている。ちなみに、モラー・チームは弁護士19人、FBIの捜査官40人などから構成されていた。
こうしたトランプ大統領らの攻勢に対し、野党民主党は戦略の練り直しに迫られている。ペロシ下院議長と上院のシューマー院内総務は報告書の全面開示を要求するとともに、「バー長官が捜査に公然と反対した過去を考えると、中立的な立場から報告書の内容を判断できない」と批判した。
バー長官は報告書の内容の一部に大陪審の証言や証拠などが含まれていることを指摘。こうした証言などは法律で公表することが禁じられていると警告しており、全面開示については否定的だ。このため、下院司法委員会のナドラー委員長はバー長官を早速証人喚問する考えだ。
だが、最近の世論調査では特別検察官の捜査が政治的な意図に基づいて行われていると考える国民が50%に達しており、「共謀なし」という今回の結果は民主党にとっては強い逆風だ。ホワイトハウスと民主党との対立は法廷闘争を含め、一気に先鋭化する雲行きだ。
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