Wedge REPORT

2019年6月18日

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 「やりたいことを仕事にする」。聞こえは良いが、実際に行動に移し、結果を残すのは難しい。「人生100年」という言葉が取りざたされている中で「第二の人生」に向けて飛び立とうとしたものの、失敗することは起こり得る。税関職員をしていたT氏もその1人。担当業務で培ってきたアパレル関係の知識を生かし、興味のあったスタイリストの職に就こうと、勇気を出して決断したものの、独立から1年がたった今も収入のない状態が続いている。

(PLANET FLEM/ GETTYIMAGES)

必要なのは専門知識だけではない

 T氏は高校を卒業してから、成田空港や羽田空港で、国際貨物や旅客荷物の通関検査を長く担当していた。不正薬物の密輸入はないか、知的財産を侵害する偽ブランド品が紛れていないか、といったものを調べていた。1日十数件もの洋服やバッグといった品物を実際に手に取り、本物と偽物を見分ける。薬物の大型密輸案件で、警察と一緒に張り込みをして摘発し、国から表彰されたこともあった。

 ただ、勤務を続ける中で「自分は誰のため、何のために働いているのか」を考えるようになった。与えられた仕事を忠実にこなす日々。旅客と親密に話すことも職務として求められることではなかった。「サービスとは何かを考えました」。人を喜ばす仕事をしたいと思うようになった。

 そこで思いついたのがファッションに関連する仕事に就くことだった。数多くのアパレル関連商品の本物と偽物を見極める知識や、何が良い商品でどのくらいの価格が付けられているかを見てきた審美眼、どんな品物がどれだけ輸入されてきたか潮流を抑えてきた経験には自信があった。「スタイリストをやれば、お客様の反応を直接見ることができる」。2018年6月に、約30年続けた税関職員を辞めた。

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