2024年12月23日(月)

<短期連載>ペット業界の舞台裏

2011年12月28日

 ペット業界の中で、唯一公的な資格に裏付けされた職種が小動物の臨床を行う獣医師という職業です。「動物病院のお医者さん」は個人的に夢の職業であったため、非常に魅力的で尊敬できる仕事だと考えています。ペットブームと共に獣医学部は人気の学部となり、資格取得者も増え開業医の数も増えています(http://www3.ocn.ne.jp/~kk123/genjyo.html)。

 ペット業界も獣医師も、ターゲットが「ペットの飼い主」であるため、本来両者の関係は友好的であり、飼い主にとっても有益であるべきです。しかし最近、この「飼い主にとっての有益性」が疑問に感じられる場面に遭遇することがあります。

持ちつ持たれつ
ペットショップと提携病院

 まずはペットショップと提携している動物病院の話です。生体を扱うお店で働いていると、獣医師との関係がとても重要な要因となります。幼齢動物の生態や扱いに慣れていて、お店の方針も理解してくれる病院と提携しているのが普通です。お店の犬猫の健康管理やワクチン接種、販売後も飼い主さんに対してアドバイスして頂くなど、獣医師の力を借りないとなかなか難しいでしょう。ショップと動物病院は同じ地域の飼い主が利用する場合が多いので、病院側も提携をメリットと感じていることが多いのです。お互いが常識を持って経営している場合に限りますが…。

 飼い主にとって問題となるのは、提携を通り越し「癒着」している病院の存在です。お店から購入した生体に異変があった場合、その責任を転化させるのが癒着病院の「仕事」だからです。ある種、クレーム担当の立場です。購入後すぐに伝染病や寄生虫が発見された時や先天性の疾患が見つかった場合、資格者としてお店側のリスクを軽減させるための診断を下します。生涯治療を謳うこともありますが、決して無償ではありませんし隣接していない場合も多くあります。お店側も、その病院以外での診断をクレームとして受けつけないことがままあります。セカンドオピニオンの意見を聞こうとしないお店の場合、注意する必要があるかもしれません。

 飼い主はそんな状況でも言われるがままに治療を受け、料金を支払う事になってしまいますが、そもそも「癒着」するような病院では獣医師の腕は期待できないかもしれません。

研修医の受け入れ先不足の弊害

 二つ目は増えてしまった開業を目指す資格取得者が原因となって起きた事態です。ここ数年間、獣医師国家試験の合格者数は約900人~1000人で推移していましたが、2010年には1100人を超えました(http://www.maff.go.jp/j/press/syouan/tikusui/pdf/100318-02.pdf)(http://www.maff.go.jp/j/press/syouan/tikusui/100318.html)。

 ある大学関係者の方から伺った話です。動物病院の開業には国家資格習得後、2~3年研修医として臨床を学ぶ必要があります。国家試験の範囲が畜産動物に限られているため、それ以外の動物の臨床を学ぶ必要があるからです。資格取得者数が増えると、当然研修先も多く必要となります。大きな開業医や大学病院などで研修医として働くのが通常のようですが、現在この受け入れ先が不足してきたとのことで、小さな開業医にまで受け入れをお願いしている状況になってしまっています。出身大学の恩師自らが依頼するためなかなか断り難い状況だそうです。しかしながら現状の動物病院の経営状態は、競合病院との価格競争や医薬品や処方食のネット販売の影響もあり、以前ほど良くはないようです。


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