2022年7月3日(日)

野嶋剛が読み解くアジア最新事情

2019年6月15日

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野嶋 剛 (のじま・つよし)

ジャーナリスト

1968年生れ。ジャーナリスト。上智大学新聞学科卒。大学在学中に香港中文大学に留学。92年朝日新聞社入社後、佐賀支局、中国・アモイ大学留学、西部社会部を経て、シンガポール支局長や台北支局長として中国や台湾、アジア関連の報道に携わる。2016年4月からフリーに。著書に『イラク戦争従軍記』(朝日新聞社)、『ふたつの故宮博物院』(新潮選書)、『謎の名画・清明上河図』(勉誠出版)、『銀輪の巨人ジャイアント』(東洋経済新報社)、『ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち』(講談社)、『認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾』(明石書店)、『台湾とは何か』(ちくま新書)。訳書に『チャイニーズ・ライフ』(明石書店)。最新刊は『タイワニーズ 故郷喪失者の物語』(小学館)。公式HPは https://nojimatsuyoshi.com

日本政府が「沈黙」を貫いているワケ

 これに対して、日本政府の静かな対応は、香港側からすれば物足りないように映るようだ。周庭さんは日本での会見や講演で「日本政府、日本の政治家には香港の問題にもっと関心を持ってほしい」「日本国民の安全を守るためにも(逃亡犯条例に対して)意見を言ったほうがいいのではないでしょうか」と語っている。

 河野外務大臣は5日の衆議院外務委員会で香港の問題を問われたとき、「香港の一国二制度というのは、司法が高い独立性を維持している」「大声で叫べばよいというものではない」と述べた。しかし、実際には香港の一国二制度が崩壊にさしかかっているというのが、世界における客観的な評価であろう。河野外務大臣は13日に自らのツイッターで「香港の友人として、最近の情勢を大変心配しています。特に多くの負傷者が出ていることに心を痛めています。平和的な話合いを通じて、事態が早期に収拾され、香港の自由と民主が維持されることを強く期待します」と述べたが、個人のリアクションにとどまっている。

iStock / Getty Images Plus / werbeantrieb

 実際のところ、G20首脳会議を控えて、香港問題に焦点が当たりすぎることは、議長国を務める日本にとって難しい舵取りを強いられるうえ、国家主席として初めて来日する習近平・国家主席と安倍晋三首相の首脳会談にも影響しかねない。長年緊張関係にあった日中関係だが、この首脳会談で雪解けを演出することを日中両政府とも非常に重視しており、できれば友好的なムードのまま習近平・国家主席を迎えたいという点も本音であろう。

 香港政府も中国政府も今回のデモにおける「外国勢力」の関与に対しては警戒心を高めている。中国の外交部報道官耿爽はペロシ下院議長の発言に対して、「香港事務は中国の内政に属することでいかなる国家、組織、個人も関与をする権利がない。米国は客観的かつ公正に香港政府の修正を見守るべきだ」と語った。また、香港のウェブメディア「香港01」の報道によれば、今回の若者のデモは裏で「外国組織の策謀」が存在しているものだと判断し、催涙ガスやビーンバッグ弾による実力行使での鎮圧という手段を使ったと報じている。

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