意外と知らない日本と香港の深いつながり
実は日本と香港の関係には深いものがあり、経済的な利害関係も大きい。統計によれば、2018年の香港進出日系企業数は1393社に達しており、中国を除けば、1351社の米国を抑えて国別で3年連続1位となっている。日本企業は香港返還の前から対中ビジネスでは香港経由の方法をとっており、その伝統は今も変わっていないだけでなく、進出企業はむしろ増えている傾向にある。
日本の農産物の輸出先としても、香港は2018年までに14年間連続で1位を誇っている。2018年の香港から日本への旅行者数は、2年連続で220 万人(香港の人口は約740万人)を上回った。5人に1人は過去に10回以上も日本を訪れたことがあるという「日本好き」が際立っており、香港人は個人消費力も高いので、日本の観光業や飲食業への貢献は大きい。
その割に、香港の重要性は日本人には過小評価されているところがあるのも事実だろう。周庭さんが12日に明治大学で行った講演は、同大学法学部の鈴木賢教授の授業の一貫であったが一般公開されたため、メディアに加えて、在日の香港人留学生らが数百人詰めかけ、異様な雰囲気になった。
彼らの多くは香港の危機を訴えるポスターを手に持っており、大学内での政治活動にあたると大学側から制止される場面もあった。会場では、香港人の女子学生が立ち上がり、「私はいまマスクをかけています。それはいつビデオに撮られて起訴されるかわからないからです。自分を守るためにやっています。香港はこうした状況にあることを日本のみなさんもぜひ情報拡散してください」と呼びかけると、会場から大きな拍手が沸き起こった。
ただ、日本人が香港に無関心かというと、必ずしもそうではないだろう。1970年代までは「新婚旅行はハワイか香港」が日本人の若いカップルの夢だった時代もあった。香港の人文・文化への研究水準は、香港人や中国人も及ばない高いレベルの領域もあり、日本の外国語大学では広東語専攻学部も存在している。確かに、香港返還の前後よりその独自性が薄れるとの見方も広がったが、2014年の雨傘運動以降、香港への関心は底を打って回復基調にあるように見える。
今回の逃亡犯条例の改正に対する103万人という反対デモの巨大な規模と、その後の警察による流血を伴う激しい弾圧は、日本社会にも大きな衝撃を与えた。G20のなかで香港情勢を日本政府がどのように取り扱うか、世界が注目することになるだろう。
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(周庭さんインタビュー・2019年1月9日)
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