今後、稲川さんが注目するのは、何といっても5Gだ。現在の4Gに比べて100倍の通信速度で、低遅延、さらにマルチに機器とつながることができるという、まさにIoT時代に欠かせない通信インフラとなる。
「5Gは、常につながっている状態にすることができます。ダウンロード、アップロード、ストリーミングがストレスなく行われ、また蓄積された情報をAIが瞬時に分析して情報を提供してくれるようになります。まさに一度体験するとやめられなくなる世界だと思います」
現在、ドコモベンチャーズが投資した企業の一覧が同社のホームページ掲載されているが、こうした企業を見ているだけで、近い未来に提供される(すでに提供されているものもある)サービスを想像することができてワクワクする。
例えば、「ORIGINAL STITCH」という会社は、シャツの記事、形状などいくつもの要素を個人がカスタマイズして注文することができる。
「RADAR」は、RFIDを使った無人決済や、在庫管理を行うサービスの開発を行っている。日本でも身近なところでは、ユニクロやGUなどで使用されているが、食品などへの活用は未だに行われていない。これが広がれば、コンビニ等での人出不足の解消にもつながるとされている。
このほか日本国内でも「電脳交通」という徳島の会社で、複数のタクシー会社の配車を一手に束ねて対応するというサービスを行う会社にも出資している。
それでもシリコンバレーが強いワケ
このところ、アメリカ国内に限らず、シリコンバレーをフォローする動きが出ており、中には「シリコンバレー疲れ」ということを言う人もいる。アメリカ国内では、シアトル、ニューヨーク、ボストン、さらに世界的にも、中国の深セン、東南アジアの主要都市、パリなどベンチャー企業を育成しようと積極的に動いている。
「アマゾンがいるシアトルが注目されていることはもちろん、シリコンバレーでも、サンフランシスコに回帰するという動きがあります。シリコンバレーは、グルーグル、アップルなど成功した企業の町になりつつあるからです。そのため、サンフランシスコ市内の雑居ビルなどにベンチャー企業が入居するといった動きがあります。それでも、シリコンバレー(サンフランシスコを含む)の、人・モノ・カネをひきつける力は、まだまだ衰えていません」
CVCとして金銭的、戦略的なリターンを得ると共に、シリコンバレーで揉まれた、ドコモの若手社員たちが、新しいビジネスを立ち上げる原動力となっていくことを稲川氏は期待している。
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。