2023年2月8日(水)

迷走する日本の「働き方改革」への処方箋

2019年7月4日

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立花 聡 (たちばな・さとし)

エリス・コンサルティング代表・法学博士

1964年生まれ。早稲田大学理工学部卒。LIXIL(当時トステム)東京本社勤務を経て、英ロイター通信社に入社。1994年から6年間、ロイター中国・東アジア日系市場統括マネージャーとして、上海と香港に駐在。2000年ロイター退職後、エリス・コンサルティングを創設、代表兼首席コンサルタントを務め、現在に至る。法学博士、経営学修士(MBA)。早稲田大学トランスナショナルHRM研究所招聘研究員。

 

「働き方改革」と「雇い方改革」

 まず、OSの変更は容易なことではない。世の中「改革」ほど難しいことはない。改革は必ず既得権益層の抵抗に遇うからだ。終身雇用制度の問題はずいぶん前から気付かれていたにも関わらず、誰もがはっきり言い出せなかった。問題が進み深刻化すると、政府はようやく重い腰を上げる。それでも「働き方改革」と名付けて当たり障りのないところ、残業削減やら非正規格差解消やら万人受けしそうなテーマを取り上げて取り組もうとする(参照:『働き方改革の議論はなぜ進まないのか?』)。

 「働き方改革」は突き詰めたところ、「労働市場改革」であり、さらに掘り下げると「終身雇用制度の崩壊」を背景とする雇用システムの交替にほかならない。要するに「働き方改革」以前の問題であり、「雇い方改革」なのである。トップ層はトップダウン型の「雇い方改革」を持ち出せば、風当たりが強くなり、立場が悪くなるから、ボトムアップ型の「働き方改革」にすり替えてお茶を濁す。だから、「働き方改革」はいつまでも本格的に進まないのである。

 政治家は票を失うことを恐れている。経営者は従業員からの批判を恐れている。メディアの場合、世間の非難や読者・視聴者離れを恐れている。政治家も経営者もメディアも揃って労働市場改革の議論を忌避してきたのは、それが国民に不人気なテーマだったからである。これ自体も日本型組織の特徴である。正しい判断と素早い行動よりも総意の集結、コンセンサスの形成に価値が置かれていた。コンセンサスが形成されないうちに、独裁的な判断や意思決定を控え、むしろ状況の悪化を座視するよりほかない。

 情況の悪化が進むにつれ、段階的に小分けにしてリストラを実施していくのが、大方の日本企業のやり方だ。具体的な社名を挙げるのを控えるが、現状を見る限り、こうした傾向が顕著である。私からみれば、非常にまずいやり方である。理由を言おう。


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