2023年1月28日(土)

迷走する日本の「働き方改革」への処方箋

2019年7月4日

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立花 聡 (たちばな・さとし)

エリス・コンサルティング代表・法学博士

1964年生まれ。早稲田大学理工学部卒。LIXIL(当時トステム)東京本社勤務を経て、英ロイター通信社に入社。1994年から6年間、ロイター中国・東アジア日系市場統括マネージャーとして、上海と香港に駐在。2000年ロイター退職後、エリス・コンサルティングを創設、代表兼首席コンサルタントを務め、現在に至る。法学博士、経営学修士(MBA)。早稲田大学トランスナショナルHRM研究所招聘研究員。

 

小分けのリストラはなぜまずいか?

 まず、労働市場改革の趣旨(目的)はリストラではなく、時代に順応した制度の構造改革である。リストラはあくまでも構造改革のための一手段に過ぎない。目的と手段の取り違えは本末転倒の愚行である。

 次に、リストラを小分けにしてやると、社内の雰囲気が悪くなる。社員の誰もが次のリストラを危惧し疑心暗鬼になり、仕事に専念するどころか、士気低下につながりかねない。痛みを小分けにするのは、苦痛や恐怖を味わう期間を長くすることであり、経営や人事管理上のタブーなのである(逆に、インセンティブの場合、なるべくこれを小分けにして与えると、従業員が幸福感を味わえる期間が長くなる)。

 最後に、早期退職募集という形態のリストラをやると、サバイバル力の高い社員がまず手を挙げる傾向が見られる。私の知り合いの中にも、早期退職に応募して給料の高い外資系企業に転職したり、割増退職金を軍資金にして起業し、成功した人は何人もいる。企業はいかに馬鹿げたことをしているか。金を積んで有能な従業員を追い出しているようなものだ。

 早期退職募集は、辞めてほしい社員は辞めず、辞めてほしくない社員がどんどん辞めていくという本末転倒の現象を招いている。企業もこれに気付いている。そこで狙い撃ち型の退職募集に乗り出す。特定の社員を呼び出し、「あなたは残っても仕事がない」と退職強要まがいの「面談」で精神的に追い討ちをかける。というようなケースが続発していると、企業のイメージにも傷が付く。


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