取り込めるユーザー数が多いのがポイント
ピンクが好きというユーザーは必ず一定数います。しかし、日本メーカーはピンクの家電などまず作りません。理由は、在庫を持つのをスゴく嫌うからです。しかしカラーバリエーションさえあれば、その人たちをユーザーにすることは可能です。
ティファールの電気ケトルは、それに似た感じです。たかがやかんですが、そこにユーザーの好みは必ずでてきます。それをラインナップしたわけです。
低価格は「売り切りゴメン」の商品でいい
しかし一方で、次のような声が必ず出ます。「管理」と「在庫調整」が大変。売れないモデルだとすこぶる大変。
これには次の様に答えましょう。
「売り切りゴメンにしなさい」と。
つまりある一定の数量しか作らないわけです。次は、同じ要素でデザインをちょっと変えてやればいいのです。色を変えるのも一つ。オールスケルトン樹脂という、懐かしのiMacのようなデザインもありかもしれません。
日本の家電の場合、どんなにヒットしたモデルでも、1年でモデルチェンジします。そしてその度に、新しい3つの特長。当然、疲弊します。
日本の家電メーカーは「技術」に引っ張られ、割りと見失いがちなところですが、商品は、「デザイン(含設計)」「技術」「価格」の3要素から成り立っており、技術だけで作られるわけではありません。「デザイン」「価格」を疎かにすると、全く売れない商品となります。
私は何も日本製品の「安全神話」「高品質神話」を壊せと言っているわけではありません。が、場合によっては、「ほどほど」「塩梅(あんばい)」と言う昔ながらの日本人の感覚も大切にして欲しいと思っているだけです。
やかんは、ある意味危ないように思えますが、多くの場合、非常に安定した形で置いたときに簡単にひっくり帰らない様デザインされています。それから言うと、転がる前提のケトルはまだ形(デザイン)に改良の余地があるわけです。
この力が抜けた作りができないと、日本家電メーカーは低価格市場をほとんど海外メーカーに取られてしまうと思います。中国に価格で対抗できないというのは、分かります。しかし、余りにも日本は、高技術で、高付加価値品を作り、高値で販売すると言うことにこだわりすぎてはいないでしょうか?
是非、ティファールの電気ケトルをお湯を沸かし、コーヒーかお茶を淹れて、ゆっくりと。
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