Washington Files

2019年7月16日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。近著に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

目玉は「Wall Street Tax」

 同議員は2016年大統領選でヒラリー・クリントン氏と指名争いを演じた際に、全米公立大学の「授業料全額免除」をスローガンに掲げ、若者の間で絶大な支持を集めた。今回はこれをさらに一歩進め、すでにローン返済に苦しめられている全学生および卒業生を対象に1兆6000億ドルの借金全額を帳消しにすることを提案した。授業料免除と合わせ、そのための総コストは「10年間で2兆2000億ドル」を見込んでいる。

 問題はその財源確保だが、サンダース氏のプランによると、その目玉は「Wall Street Tax」と呼ばれ、これまで無税だったウォール街での株、債権、デリバティブ売買に0.5%程度の富裕税をかけることを狙っている。これによって、「今後10年間で2兆4000億ドル」の増収が期待され、これまで難題とされてきた学生ローン問題は一気に解決できるというものだ。

 また、有力候補の一人でもあるエリザベス・ウォーレン上院議員(マサチューセッツ州)もサンダース候補同様、借金に苦しむ学生たちの救済の必要性を早い段階から訴えてきたことで知られる。

 ただ、ウォーレン女史の場合は、恩恵を受ける対象者を限定、具体的には①年収10万ドル以下の世帯に対しては一人当たり5万ドルを限度にローンを帳消し②年収10万ドルから25万ドルの世帯の場合は「相当額」を帳消し③年収25万ドル以上の世帯は対象外―という3グループに分けた点が最大の特徴であり、そのための必要コストも「10年間で1兆2500億ドル」と控えめだ。なお、財源確保の方法についてはまだ、詳細は明らかにされていない。

 一方、現段階で再選目指すトランプ氏にとって最も手ごわい候補と見られているジョー・バイデン前副大統領の場合、財政悪化などを理由に今のところ、目を引くほどの提案はなく、各州に点在するコミュニティ・カレッジ(2年制)の全学生を対象に授業料免除措置を打ち出す程度にとどまっている。

 ただ、バイデン氏は副大統領在任当時の2015年に、授業料免除を4年生大学にまで拡充する案に対し支持表明した経緯がある。同氏は今後、民主党候補間での指名争いが過熱していく中で、これまで以上に「学生ローン」問題に有権者の関心が集まってきた場合、より大胆な救済案を持ち出す可能性も否定できない。

 このように、「学生ローン」問題が、大統領選の大きな争点として浮上してきた背景には近年、若年有権者層の政治的役割が重視され始めたことがある。

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