共演者と魅力を引き出しあう女優、広瀬すず
第16週「なつよ、恋の季節が来た」は、短編を任されて監督見習いの坂場一久(中川大志)と、なつの恋模様である。すずは、坂場との会話が頭の隅に残って忘れられない。
坂場 一緒に作ってほしいんです
すず 一緒に?
坂場 一生かけても、あなたと作りたいんです
ドラマは、広瀬すずと男優たちのやりとりを縦糸とするなら、多彩な女優陣とのやり取りは横糸となって、なつの人間としての成長を織りなしていく。女優としての広瀬には、こうしたふたつの演技の側面がある。
是枝裕和監督の映画「海街diary」(2015年)は、広瀬すずをスターに押し上げた、代表作である。長女の綾瀬はるか、次女の長澤まさみ、三女の夏帆の父親が亡くなって、別の女性との間で生まれた、広瀬すずを引き取る。綾瀬と長澤、夏帆はそれぞれ、付き合っている男性との悩みを抱えながら、一緒に暮らしている。父の死によって、はじめて妹がいることを知る。
ドラマの柴田家に迎えられたなつの姿が、「海街diary」の広瀬の演技と重なる。家族との微妙な距離感と、やがて一体となっていく喜びである。是枝監督に見出された、広瀬の幸せは幸せである。
競技かるたに挑戦する女子高校生役を演じた、「ちはやふるシリーズ」3作(小泉徳宏監督)においても、上白石萌音や松岡茉優ら人気女優たちとのやり取りも記憶に残る。
ドラマでも、これからの映像文化を担っていく女優たちが競演している。なつの妹・千遥役の清原果耶は、兄の咲太郎(岡田)が孤児院から親戚宅に預けたが8歳で家出をした。なつが、孤児院宛に出した手紙の住所をてがかりにして、北海道の柴田家を訪れる。なつが、上京したあとのことだった。
千遥が柴田家の人々に語った境遇は、家出のあとに復員兵に拾われ、実の娘だと偽られて芸者の置屋に売られた。女将にはかわいがられて、結婚が決まったが、相手先がかなりの家柄なので、戦災孤児の過去を話すことを禁じられたという。「わたしをもう探さないように姉にいってください。わたしからも連絡はしません」と。
兄の咲太郎となつは、北海道に急ぐが、千遥はひっそりといなくなっていた。千遥の物語は、ドラマの後半になって再び綴られる予感がする。
十勝の農業高校で、なつの同級生・居村良子役の富田望生の演技も光った。「ソロモンの偽証」(成島出監督・2015年)のオーディションによってデビューし、最近の「町田くんの世界」(石井裕也監督)など、名わき役に成長する才能を秘めている。
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