コラムの時代の愛−辺境の声−

2019年8月4日

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 南部アフリカの干ばつがもたらした奇跡というと、ダイヤモンド発見の言い伝えが思い浮かぶ。

 1866年、南アフリカのキンバリー近郊にあるホープタウンと呼ばれる町の近くで、土着白人、アフリカーナーの農家の少年、エラスムス・ステファノス・ヤコブスがアカシアの木の下で昼寝をしていた。

 彼がまどろみから目覚めると、何年にもわたる干ばつで大きく掘り下がってしまった地面に、何か光るものがあるのを目にした。

 手のひらにちょうど収まるくらいの薄茶色の石を太陽にかざしてみると、石の中に、それまで目にしたことのない、まばゆい光が宿っていた。

 それが人類史上初となる、ダイヤモンド鉱床発見の瞬間だった。

 噂が噂を呼び、資源に目がない英国人が南部アフリカに一気に押し寄せるのに時間はかからなかった。

 それが人々を幸福にしたかは別にして、南部アフリカの地図を大きく塗り替え、人々の歴史を動かしたのは確かだ。

 「風をつかまえた少年」の奇跡は何をもたらすのだろうか。

7月11日午後、東京都内でインビューに応じるウィリアム・カムクワンバさん=藤原章生撮影

 一つ言えるのは、一躍有名になり考えてもいなかった高等教育を受け、2013年には米タイム誌に「世界を変える30人」に選ばれれたカムクワンバさんに、全く気負いが見られないことだ。

 その語り口、居住まいはまさに南部アフリカの村々にいそうな、寡黙ながら世を見通している「賢い少年」の姿そのものなのである。

 (「風をつかまえた少年」は東京のヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館などで上映中)

  
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