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2020年1月1日

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磯山友幸 (いそやま・ともゆき)

経済ジャーナリスト

1962年東京生まれ。1987年早稲田大学政治経済学部卒業。日本経済新聞で証券部記者、同部次長、チューリヒ支局長、フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長・編集委員などを務め、2011年3月末で退社、独立。現在、経済政策を中心に政・財・官を幅広く取材、各種メディアに執筆するほか、講演やテレビ出演、勉強会の主宰など幅広く活躍している。オフィシャルHP(http://isoyamatomoyuki.com/)

著書に『2022年、「働き方」はこうなる』(PHPビジネス新書)、『理と情の狭間 大塚家具から考えるコーポレートガバナンス』(日経BP)、『国際会計基準戦争 完結編』(日系BP)、『ブランド王国スイスの秘密』(日経BP)など。共著に『オリンパス症候群 自壊する「日本型」株式会社』(平凡社)、『株主の反乱』(日本経済新聞社)などがある。

早稲田大学政治経済学術院(大学院)非常勤講師、上智大学非常勤講師。ボーイスカウト日本連盟理事。静岡県ふじのくにづくりリーディングアドバイザーも務める。

日経ビジネスオンライン(日経BP)、現代ビジネス(講談社)、フォーサイト(新潮社)、月刊 WEDGE(ウェッジ)、月刊 エルネオス(エルネオス出版)、フジサンケイビジネスアイ(産経新聞社)などに連載コラムなどを持ち、定期執筆している。

 小料理店をそのままツナ専門の売店に変えた。引き戸を開けると、正面のカウンターの上にある刺身などを入れてきたショーケースの中に、「おつな」の瓶が並ぶ。味は10種類。「島唐辛子」「えごま大葉味噌」「ポルチーニ味」「ドライトマト&バジル」などなど、和洋のレシピが並ぶ。島唐辛子は酒の肴にもってこいだし、ドライトマトとバジルのツナは茹(ゆ)でたスパゲッティに軽くあえるだけでイタリアンのひと皿に早変わりする。

お猪口に出された10種類の「おつな」

 店を訪れた客には、10種類のツナをお猪口(ちょこ)に入れて味をみてもらうようにした。小料理屋の店先で利き酒ならぬ、利きツナだ。気に入った味を見つけて買って帰る。そんな気の利いた販売方法が取れるのも長年小料理屋を営んでいたからに他ならない。

 ところが、店を開けていられない事態に直面する。2018年の夏のことだ。婦人雑誌に贈答用の逸品として取り上げられたのである。一気に注文が舞い込んできた。商品作りが間に合わず、来店客をさばききれなくなったのだ。今は、週に数日だけ店を開いている。

 3瓶のセットで税金を入れて5000円に収まるという価格設定も贈答向けにぴったりだった。近隣の結婚式場で引き出物として人気商品になった。フル生産で月に3000個の瓶詰めを作っているが、料理屋だった店の調理場での手作りは限界にきている。

焼津で「おつな」ラボ

 静岡県焼津市。国内第1号のツナ缶はこの町で生まれた。昭和初期、焼津水産学校(現在の静岡県立焼津水産高校)が作った。水産高校では今も、生徒らが実習でツナ缶を作り続けている。

 名実ともにツナの町である焼津に、「おつな」のラボを作ることにしたのだ。鮮魚店だった場所を借り、「おつな」の加工場を作る。「おつな」だけでなく他社の様々なツナ製品を集めて「専門店」を開くことも考えている。

 長年ツナ缶を作っていた焼津の加工場の多くが、様々なブランドで高級缶詰などひと工夫凝らしたツナ製品を製造している。昔ながらのなまり節や佃煮(つくだに)ではなく、より高い付加価値を付けた商品を開発し、全国に発信していきたい。そんな思いがあふれる焼津の町おこしに貢献することもできるのではないか。関根さんの夢は広がる。インバウンドの顧客が増える中で、焼津のマグロは競争力の高いコンテンツになる。

 「5万円のよこツナ(横綱)をいつか出したいと思っています」と、関根さん。横長の瓶に大トロの切り身をオイルと共に入れ、相撲の横綱が締める綱のような形にする。味もさることながら縁起の良い引き出物、贈り物として使われるのは間違いない、と確信している。

 焼津のラボでも基本は手作りだ。工場で大量に安く作るのが当たり前だと思われてきたものに、あえてこだわりの手作りで挑戦する。薄利多売ではなく、いかに付加価値を付けるか、それに見合った価格で売るには、どの客層にどんな仕掛けで売っていくのか。おつなの乙な挑戦は止まらない。

  
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◆Wedge2019年5月号より

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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