香港の市民デモや集会は一向に収束する気配を見せない。空港から駅、街頭まで多発デモが常態化し、航空便の欠航や鉄道・バスの運休が相次ぐなかで、国際金融センターである香港は未曾有の混乱に陥り、今なお情勢が混迷を深めている。世界が注目している「香港問題」の本質とは一体何であろうか?
「黒い手」の存在
初期のデモは、刑事事件の容疑者を香港から中国本土へ引き渡せるようにする「逃亡犯条例」改正案に抗議するものだったが、徐々に中国政府への反発が表面化し、民主化を求める抗議に変わってきている。
8月9日から香港国際空港内で行われた座り込み抗議を見ると、「光復香港、時代革命Liberate HK, Revolution Now」のスローガンが打ち出されていた。「革命」とは、決して穏やかな話ではない。むしろ、単なる一法案への抗議を超えているように思える。
香港初代行政長官・董建華氏は7月31日、今回の抗議活動について「展開が迅速で規模も大きく、緻密な組織があって隠ぺい度が高い」とコメントし、具体的な証拠への言及を避けながらも、背後に「黒い手」たる存在、「台湾と米国」などの外部勢力の介入を示唆した(8月1日付け香港紙明報)。
董氏のこの発言があってわずか1週間後、ついに「証拠」が見つかった。
中国メディアは8月8日、在香港米総領事館員のジュリー・イーデー氏がホテルのロビーで黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏をはじめとする反対派の主要人物らと面会した写真を公開した。中国の英字紙チャイナ・デイリーなど本土系メディアはこの面会を根拠に、米国の「黒い手」が抗議活動の背後にあったと主張した。
中国・中央テレビ(CCTV)は8月9日、米中央情報局(CIA)は旧ソ連諸国で起きた抗議活動「カラー革命」を扇動したことで知られると伝え、米国の介入を批判した(8月10日付け米ウォール・ストリート・ジャーナル)。
昨今の米中貿易戦争という文脈から読むと、香港問題に米国が何らかの形で影響を及ぼしている可能性がまったくないとは言えない。その理由を説明するには、今回の香港デモの落とし所をシミュレートする必要がある。