2023年1月31日(火)

From NY

2019年8月21日

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田村明子 (たむら・あきこ)

ジャーナリスト

盛岡市生まれ。1977年米国に単身留学し、1980年から現在までニューヨーク在住。著書に『ニューヨーカーに学ぶ軽く見られない英語』(朝日新書)、『知的な英語、好かれる英語』(生活人新書)、『女を上げる英会話』(青春出版社)、『聞き上手の英会話』(KADOKAWA/中経出版)など。翻訳書も多数。フィギュアスケートライターとしても知られており、『挑戦者たち-男子フィギュアスケート平昌五輪を超えて』(新潮社)で2018年ミズノスポーツライター賞受賞。

 世界中の富豪が集まってくるニューヨークだけに、こうしたサービスを利用する顧客たちの使うお金の額は桁が違う。これまで一度の買い物で40万ドル(およそ4200万円)を使った顧客もいたという。トップクラスの常連客はおよそ20人いて、それぞれが年間およそ100万ドル(およそ1億700万円)分の買い物をしていくそうだ。

 こうした顧客たちのためにバーニーズ・ニューヨークには高級ホテル並みのコンセルジュデスクがあり、レストランやホテルの予約はもちろん、航空券の手配までしてくれるのだという。

 上流社会に支えられてきたバーニーズがなぜ経済破綻に追い込まれたのか。

盗撮避け、セレブ〝専用〟オンラインショップ利用

 「いくつかの理由があると思いますが、まずオンラインショッピングの影響力は、大きいと思います」とジェニファーは説明する。オンラインショッピングといっても、アマゾンのような一般人が利用するようなものではないのだという。

 「Net-O-Porterのような高級ブランドのオンラインショッピングサイトでは、一目で今のトレンドがわかるように整理されているし、一定金額以上使えば送料も無料。返品も簡単にできます。また最近のSNSでは、ハリウッドの女優の着ているものなどをクリックするとすぐにショッピングサイトにいけるような工夫もされている。最近はちょっと顔を知られている有名人なら外を歩けばすぐに盗撮され、SNSに投稿されます。そのような人々にとっても、オンラインショッピングは便利なものでしょう」

 なるほど、筆者も一昔前にはバーニーズでカトリーヌ・ドヌーブやライザ・ミネリなどの有名人を見かけたことがある。誰もがスマートフォンを持ち歩いている現代社会では、こうした芸能人も以前ほど気軽に外を闊歩するのにためらいを感じるだろう。

 バーニーズ自身も、Barneys およびアウトレットのBarneys Wearhouseの二つのショッピングサイトを運営しているが、小売ではなくメーカーブランドのオンラインショッピングサイトから直接購入する人も増えているのだという。

小売業者を圧迫する賃貸料の高騰

 だがそれにも増して、バーニーズの経営を圧迫したのは高騰し続けるニューヨークの不動産事情である。

 2019年1月にバーニーズがマディソンアベニューにあるフラッグシップストアの賃貸契約を更新した際、家賃がそれまでの年間1600万ドルから3000万ドルにと倍近くに上がった。これに不動産税などを加えると、年間4400万ドルの最低経費が必要になるという。

 年間100万ドル落としていく常連客20人を抱えていても、これでは経営破綻しても不思議ではない。ウォールストリートジャーナル紙は、現在バーニーズはおよそ2億ドルもの負債があると噂されている、と報道した。

 今後チャプター11の再生法に従い、生き残りをかけて梃入れをしていくことになる。その中で現在予定されているのは、マディソンアベニューにあるフラッグシップストアのフロア面積を半分に縮小すること。さらに全米で22店舗ある支店を7店舗までに削減することである。マンハッタンとビバリーヒルズ、ボストンなどを残し、シカゴ、フィラデルフィア、ラスベガス、シアトルなどの店舗の閉鎖が予測されている。ちなみに日本のバーニーズジャパンは、提携のみで資本は別なので影響は受けない。

 2017年にはラルフ・ローレンが五番街のフラッグシップストアを閉め、今年の春にはカルバン・クラインがマディソンアベニューのフラッグシップストアを閉めたばかり。こうした高級ブランドですら大型店舗を維持していけないマンハッタンの街並みは、今後どのような変貌を見せていくのだろうか。

  
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