2023年1月28日(土)

前向きに読み解く経済の裏側

2019年8月26日

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塚崎公義 (つかさき きみよし)

経済評論家

1981年 東京大学法学部卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。主に経済調査関連の業務に従事。2005年 銀行を退職して久留米大学へ。現職は久留米大学商学部教授であるが、当サイトへの寄稿は一個人として行うものであるため、肩書きは「経済評論家」とする。

倒産企業の労働者にとっても「良いこと」かも

 倒産した企業の労働者というと、普通であれば失業して露頭に迷う可哀想な人なわけですが、人手不足倒産の場合には、そうではないでしょう。すぐに次の仕事が見つかるはずですから、失業の心配はありません。

 しかも、新しい仕事は以前の仕事よりも条件が良い場合も多いでしょう。これまでの勤務先は、待遇が悪いから労働者が集まらずに倒産したので、その会社から普通の待遇の会社に移るならば待遇は改善するはずだ、というわけですね。

 労働者が今まで待遇の悪い会社にいた理由は、ケースバイケースでしょうが、労働者が「情報弱者」で自分の待遇が世の中より悪いことを知らなかった場合や、待遇が悪いことは知っていたけれども、世話になった会社に恩があるので転職を言い出せなかった場合などは、「倒産したからこそ転職できた」ということになるわけですね。

倒産より合併等の方が遥かに良いが……

 倒産より、合併や事業譲渡などの方が、日本経済にとっては遥かに好ましいでしょう。倒産は膨大な無駄を生みます。企業の財産である「顧客からの信頼」や「ノウハウ」等が雲散霧消してしまうのはもったいないことです。加えて、まだ使える機械がスクラップ業者に二足三文で買いたたかれたりもするでしょう。

 そこで筆者としては、経営者に「倒産前に、事業譲渡等を検討して欲しい」と考えています。経営者としては、最後の最後まで倒産を回避して自分が経営者として会社を立て直したい、という気持ちがあるでしょうから、容易なことではないでしょうが。

 もっとも、この点に関して筆者が注目しているのは、増えているとは言っても人手不足倒産の件数自体は非常に少ないということです。たとえば東京商工リサーチによれば、今年1月から7月までで求人難、従業員退職、人件費高騰で倒産した企業は100社弱にとどまっています。

 おそらく、多くの企業が事業譲渡などによって倒産を回避した結果なのだと、筆者はこの結果を前向きに捉えている次第です。

  
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