Wedge創刊30周年記念インタビュー・新時代に挑む30人

2019年11月17日

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磯山友幸 (いそやま・ともゆき)

経済ジャーナリスト

1962年東京生まれ。1987年早稲田大学政治経済学部卒業。日本経済新聞で証券部記者、同部次長、チューリヒ支局長、フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長・編集委員などを務め、2011年3月末で退社、独立。現在、経済政策を中心に政・財・官を幅広く取材、各種メディアに執筆するほか、講演やテレビ出演、勉強会の主宰など幅広く活躍している。オフィシャルHP(http://isoyamatomoyuki.com/)

著書に『2022年、「働き方」はこうなる』(PHPビジネス新書)、『理と情の狭間 大塚家具から考えるコーポレートガバナンス』(日経BP)、『国際会計基準戦争 完結編』(日系BP)、『ブランド王国スイスの秘密』(日経BP)など。共著に『オリンパス症候群 自壊する「日本型」株式会社』(平凡社)、『株主の反乱』(日本経済新聞社)などがある。

早稲田大学政治経済学術院(大学院)非常勤講師、上智大学非常勤講師。ボーイスカウト日本連盟理事。静岡県ふじのくにづくりリーディングアドバイザーも務める。

日経ビジネスオンライン(日経BP)、現代ビジネス(講談社)、フォーサイト(新潮社)、月刊 WEDGE(ウェッジ)、月刊 エルネオス(エルネオス出版)、フジサンケイビジネスアイ(産経新聞社)などに連載コラムなどを持ち、定期執筆している。

本記事掲載のWedge5月号『創刊30周年記念インタビュー「新時代に挑む30人」』では、「ホンダジェット」の生みの親・藤野道格氏ラグビー日本代表・リーチ・マイケル氏USJ復活の立役者でマーケターの森岡毅氏大峯千日回峰行を満行した大阿闍梨・塩沼亮潤氏など様々な分野で令和の時代を牽引していく30人にインタビューを行いました。

値段やデザインだけでなく、「作り手の想い」に共感して買う人がいる。そんな仲間づくりを通じて「ファクトリエ」は日本の技術を未来に残そうとしている。

山田 敏夫(やまだ・としお):1982年熊本生まれ。実家は1917年創業の老舗洋品店。メイド・イン・ジャパン製品に囲まれて育つ。大学在学中、フランスへ留学し、グッチ・パリ店に勤務。近著に『ものがたりのあるものづくり ファクトリエが起こす「服」革命』(日経BP社)。(写真・井上智之)

 値段やデザインだけでなく、「作り手の想い」に共感して買う人がいる。そんな仲間づくりを通じて「ファクトリエ」は日本の技術を未来に残そうとしている。

 「30年後、自立する工場が増えていれば、日本の素晴らしいモノづくりの技術は間違いなく生き残っています」

 世界が認める日本の工場とあなたをつなぐというコンセプトで、「Factelier(ファクトリエ)」を運営する「ライフスタイルアクセント」の創業者兼CEO(最高経営責任者)の山田敏夫は、そう言ってさわやかな笑顔を見せた。

 大手の洋服メーカーからの仕事を請け負う各地の縫製工場は、安い海外工場との競争で低価格での納品に追われ、社員の平均年収が200万円を切るところもある。世界的に通用する技術を持ちながら、きちんとした価格で売る術(すべ)がないことが原因だ。

 そんな工場を回ってファクトリエとの取引をもちかけ、工場が儲かる「言い値」で仕入れる。それを「作り手の想い」に共感してくれるファクトリエの顧客に売るのだ。中間流通を排除して工場から直接仕入れるため、工場もファクトリエもともに利益を得られるという、ビジネスモデルだ。

 山田は2012年の創業以来、これまでに670以上の工場を回り、今では55の工場と契約するまでになった。

 「だいたい工場の生産の2割が当社向けに変われば、利益が大きく改善して工場が自立できるようになります」

 決してファクトリエのモデルがアパレル業界のメジャーになることはない、ということは熊本の洋品店に生まれ育った山田には痛いほど分かる。ZARAやH&M、ユニクロなど〝ファストファッション〟とトレンド(流行)や経済性(コスト)だけで戦うのは難しい。だが、顧客の中には、値段やデザインだけではなく、「作り手の想い」で買いたい人がいるはずだ。いや、むしろ便利になった今の時代だからこそ、そうした顧客を満足させる「本物」が求められているのではないか。

 55の工場経営者を山田は「革命の同志のような存在」だと言う。創意工夫で価値を創造し、それをきちんとした価格で売っていく。流行を追い、大量の在庫処分を繰り返すのが常態化しているアパレル業界の常識に抵抗し続けているからだ。

 各地の工場も、昔、ひと財産を築くことができたアパレル全盛期の世代から、二代目三代目に変わりつつある。「現状維持では衰退が目に見えているアパレル業界で、新しい挑戦をする若手が増えている」と、そうした工場を応援することがメイド・イン・ジャパンの「本物」を残すことにつながると信じている。

 だから、ファクトリエを卒業して自社ブランドで自立する工場があってもいいのだという。ファクトリエをメジャーにするのではなく、ファクトリエの考え方をメジャーにしたい─。

 それが、山田が創業以来一貫して追求していることなのである。

現在発売中のWedge5月号では、以下の特集を組んでいます。全国の書店や駅売店、アマゾンなどでお買い求めいただけます。

  
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