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2019年9月8日

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矢沢彰悟 (やざわ・しょうご)

大学卒業後、スポーツカメラマンやライターとして活動するも、学生時代から携わっていたサッカー指導者としての道を本気で志すため2015年、スペインのバルセロナに。現地の監督養成学校にて監督ライセンスを取得し、現地の少年から大人までの監督、 コーチを歴任する。 スペイン監督最高ライセンスを取得し、現在は国内クラブの育成年代を指導する。

 「文句も意見の一つだ。(選手の)保護者が何か言ってきたときは聞き流すか自分(その上司)に回せばいい。だが選手が言ってきたことは例えそれが文句だったとしてもまずは聞け。そうでないとその選手は不満を抱えたまま自分を抑えてしまう。その姿勢はチームの雰囲気に悪影響を及ぼすから、選手の表現には制限はかけるな。その上でどう対応するかは監督であるお前が決めればいい」

 言うまでもないが、選手の文句やわがままを全てそのまま受け入れろというのではない。選手が感じていること、思っていること、考えをまずは理解した上で解決策を探れ、と言っているのだ。

 もし何か腑に落ちないことや感じていることがあるなら、選手も指導者も互いに遠慮せずに言い合う。その中でお互いに納得できる着地点を探るのが、スポーツにおける本来のコミュニケーションなのだ。

指導者の仕事は〝決断〟と〝要求〟

 ただし勘違いしてはならないことが2点ある。それはその意見のぶつけ合いは決して自分だけのためではなく、あくまでチームがよくなるため、という視点を原点にしたものでなければならないということ。また最終的な決断はあくまで監督や指導者がするものである、ということだ。

 監督や指導者の最も重要な仕事は“決断する”こととそれを選手に“要求”すること。決断を下すまでのプロセスは選手も指導者も互いにチームを良くするため、互いの意見をぶつけ合って築いていくものだが、最後に決めるのはチームの責任者である指導者だ。

 例えば試合に臨むにあたってどのようなメンバーで、どのような戦い方で、誰をどのポジションに起用するのか、最後はその全てが指導者による決断だ。そしてチームが勝利するためにそれを選手たちに要求する。選手もその決断はリスペクトしなければならない。もしどうしても納得できないのであれば、チームを移籍するなど他の居場所を探す他ない。選手にはその権利がある。

 だからこそ、“決断して”“要求した”からには、望み通りの結果が出なかった時に責任を取るのは指導者だ。選手ではない。

 指導者の仕事は日常的に“決断”と“要求”の連続だが、決断するまでのプロセスにおいて指導者の意見がもっとも強いわけではないし、偉いわけでもない。あくまで指導者はチームの決断に対しての最後のスイッチを持っているだけであり、そのスイッチを持つことに対する責任を負うことが仕事である。

 そしてその決断を導き出すためには、チームに属しているメンバー全員が自らの意見や主張を自由に言い合うことができなければならない。選手は指導者の決断に対して、指導者は選手の考えに対して、互いのリスペクトが必要不可欠なのだ。

 選手と指導者の間にもし何か言えない空気があるなら、そのチームのパフォーマンスは最大まで発揮できているとは言い難いだろう。

  
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