2024年11月21日(木)

公立中学が挑む教育改革

2019年9月13日

協力者を増やして学年を動かす「ルーム長会長」

 Student First(学習者本位)を体現する、もう一人の生徒の話を紹介したい。2年3組のルーム長である倉嶋颯太さんは、前述のYELLOW義塾などを運営するルーム長会を束ねる「ルーム長会長」も務めている。

倉嶋颯太さん

 ルーム長会に参加するのは、2年生6クラスそれぞれのルーム長と副ルーム長、計12名だ。1週間に2回のペースで集まり、学校生活全体に目を向けて話し合う。そこではたくさんの課題が見つかるという。

 「例えば、2年生全員が集まる学年学活では一人ひとりの『自主入場』で集合していますが、中には遅れて来る人もいました」

 1学期はこの問題を解決するために動いた。考えた対策は12人のルーム長会メンバーを3つのチームに分け、集合場所である体育館だけでなく教室や廊下にも立って、集合時間の声がけをするというもの。以降は、ほぼ全員が遅れずに集まるようになった。

 かつての中学時代を思い返し、学年行事と言えば、遅刻した生徒が担任の先生にこっぴどく叱られて……というシーンが頭をよぎる人もいるかもしれない。しかし東部中学校では生徒自身が学年全体をマネジメントしようと動いている。2年生の場合は、固定担任制を廃止して「学年担任制」(全員担任制)へと変わったことが背景にあるようだ。

 「1年生のときは担任の先生がいて、先生がクラスを作ってくれていました。でも今は決まった担任の先生がいないので、自分たちで考えてクラスを動かしていかないといけません。今はまだ『大変だな』と感じることも多いです」

 ルーム長会長として学年全体を見渡す倉嶋さんは、9月末に迫る文化祭の準備にも余念がない。1年生の文化祭は先生の言うことを聞いていればよかった。しかし今年は、先生たちはヒントをくれるだけ。学級の出し物である劇では、テーマやシナリオ、演出方法なども自分たちで考えているという。

 もちろん、こうした大がかりな準備はルーム長会の12人だけではできないし、学年全体を動かそうと思えば協力者を増やすことも必要となる。とはいえ誰もが諸手を挙げて協力してくれるわけではないだろう。大人の世界でも、人を巻き込むのは時として何よりも難しい仕事だ。

 そんな話題を振り向けると、倉嶋さんはさらりと「秘訣」を聞かせてくれた。

 「確かになかなか協力してくれない人もいます。そんな人には、休み時間に僕から積極的に話しかけにいって仲良くなるようにしていますね。仲良くなれば、僕が学年全体に何かを伝えるときにも『倉嶋が言うんだから聞いてやろう』と反応してくれるじゃないですか。それに、そんな人ほど一緒に動くと楽しいんです」

 周りを見れば、ルーム長会以外にも1年生の頃にはなかった役割を持つ人が増え、協力者も仲間も増えている。「今は、学年を自分たちで動かしている感じです」と倉嶋さんは結んだ。


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