世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2019年9月26日

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 9月10日、トランプ大統領は、ボルトン補佐官の解任を発表した。原因には、政策面で波長が合わずトランプ大統領の我慢が限界に来たこと、そして政権内の主導権を巡るボルトン補佐官とポンペオ国務長官などの間の確執が沸騰点に達したことがあったらしい。タイミングから推測すれば、トランプ大統領が 9 月8日の週末に、キャンプ・デービッドであわや署名しかけていたタリバンとの合意に、ボルトン補佐官が異議を唱えて反故にさせたことが直接の要因だったのかと思わせる。タリバンとの合意は、アフガニスタンからの米軍の撤退を急ぎたいトランプの意向に従い、相当な無理をしたもののようであるから、ボルトンの反対には理由があったであろう。しかし、この件で、政権内の確執が噴き出し、引き金を引いた様子が窺える。 

lerbank/Turgay Malikli/iStock / Getty Images Plus

 トランプは「ジョン(ボルトン)に任せておいたら今頃4つの戦争をしていただろう」と冗談を言っていたという。ボルトンが戦争を始める前に退任することは結構だ、米国が加盟国にとどまっている国際機関が未だあることは結構だ、などと言う向きがある。しかし、ボルトンの解任によって、ホワイトハウスの機能が改善する、あるいは政策決定が秩序あるプロセスを経たものになるとの保証は、今のところない。 

 むしろ、ボルトンが去って、トランプを制止出来る人物がホワイトハウスに存在しなくなることの心配を言う向きもある。主要な課題は、イラン、北朝鮮、アフガニスタン、ヴェネズエラであるが、アフガニスタンには既に言及した。北朝鮮については、ボルトンの解任を、何らかのシグナルと受け取る可能性があろう。何か動きが出て来るかも知れない。ボルトンの強硬政策がハノイの米朝首脳会談の決裂原因だったとの見方をする人もいるが、逆に、トランプ大統領が、何等かの成果を誇りたいと交渉を急ぎ、中途半端な取引きで幕引きを図る危険がある。それを制止出来る人物がいなくなるのでは不安である。 

 当面、注目はイランであろう。イランに対する最強硬派のボルトンが去った。トランプとポンペオ長官は無条件で話し合いに応ずるようなことを言ってイランの誘い出しをやっている風がある。イランにしてみれば、無条件という条件には何のインセンティヴもない。ロウハニ大統領が出席する可能性のある国連総会が一つの焦点であろうが、「最大限の圧力」路線を修正することを暗示する、つまり何等かのインセンティヴを工夫出来ないのであれば、イランは誘いには乗らないであろう。 

 ボルトンの後継者は誰になるのだろうか。トランプ大統領は候補を絞っていると言うが、ボルトンよりも柔順である必要があろう。おそらく、ホワイトハウスで生き残るためにはそうであろうが、それだけの資質では困る。ボルトンが去った後は、ポンペオ国務長官の天下である。両者は口もきかない間柄だったようである。ポンペオの国務長官就任前の評判は、前任者のティラーソンと違って、ポンペオならトランプに何でも話せるということであった。確かに両者の関係は円滑のようであるが、ポンペオはひたすらトランプの意を迎えるように動いているようにしか見えない。これも心配である。

  
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