2024年6月20日(木)

Washington Files

2019年10月15日

決定的に重要な意味

 しかし、行為そのものについての是非論はともかく、今回のボルトン発言には、決定的に重要な意味が込められている点を見過ごすべきではない。

 まず、第一に留意しなければならないのは、ボルトン氏はつい最近まで大統領補佐官として、米政府の国家安全保障・外交政策に関する最高決定機関である「国家安全保障会議」(NSC)事務局長を務め、大統領が目を通すあらゆる機密情報(インテリジェンス)を管理する立場にあったという事実だ。

 アメリカの場合、機密情報はその重要度順に「classified」(取り扱い注意)、「confidential」(部外秘)、「secret」(秘密)、「top secret」(極秘)に分類されており、「top secret」よりさらに重大な内容を含む場合の範疇として「eyes only」(目読のみ=最高機密)がある。そして「eyes only」のスタンプが押される機密文書は性格上、その数も限定され、閲覧者は大統領とNSC事務局長以外はごく少数の当事者のみだ。案件によっては、閣僚といえども目を通すことを許されない場合もある。

 この点、ボルトン氏は在任期間中、「top secret」のみならず、つねに「eyes only」の機密情報にも接していたことになる。

 第二に、「eyes only」の文書は大統領が重要決定を下す際のカギとなる性質をもつだけに、作成に当たっては、NSC事務局長はCIA(中央情報局)、NSA(国家安全保障局)、DIA(国防情報局)などあらゆる情報機関から精度の高い情報を汲み上げた上で、最終的に“完成品”とする立場にある点だ。

 そして当然のことながら、このような“完成品”の中には、スパイ衛星、通信傍受技術などを駆使した相手国の兵器開発状況、兵力規模、部隊展開などに関する機密情報のみならず、その国の最高指導者の「意図」「真意」などに関する高度の分析結果も含まれる。

 第三に、ボルトン氏は北朝鮮の核問題について、今回のスピーチの冒頭、「包み隠さずin unvarnished terms」と異例の前置きをしたのは、これらの最高機密情報を踏まえた上での発言とみられる点だ。ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポストはじめ、ボルトン演説を報じた多くの米メディアも、こぞって「in unvarnished terms」という表現を記事の書き出しでとくに重視して紹介したこと自体、同氏の発言が最高度の機密に触れる内容だったことを示唆している。

 このような背景を前提に、ボルトン氏が吐露した発言の中で、最も注目されるのは言うまでもなく、「北朝鮮はこれまで、核放棄の戦略的決断を下したことはなく、金正恩はいかなる状況下であれ、核を放棄するつもりはない」と断じたことだ。そしてこの重大な指摘は、たんに個人的見解とか推測ではなく、金正恩氏の「意図と真意」について、独裁政権の内部にも踏み込んだあらゆる最高機密情報に立脚した判断であることは間違いない。

 加えてこの「金正恩、核放棄せず」の判断は、「国家安全保障会議」事務局長のみならず、国務省、国防総省、CIA、DIAなどの各情報機関でも共有されていると見るのが自然だろう。


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