2024年11月24日(日)

Washington Files

2019年10月21日

メンタル面が正常に機能しているか?

 「さらに問題なのはトランプの精神状況だ。ある人物のメンタル面が正常に機能しているかどうかを判断するには、精神分析医による本人との面接はあまり役立たない。なぜなら、医師の前では正常に振る舞い、まともな返事しかしないからだ。むしろ、いつも周りにいる人たちがふだんからの行動、発言、しぐさなどをつぶさに観察することで、正しい判断を下すことができる。また、トランプ大統領の場合は、テレビ画面やツイッターなどを通じ、おそらく世界一の露出度を持つ存在であるだけに、実に多くの専門家たちによる“診断”をも可能としてきた」

 「精神科医の学界で最も引用されるマニュアル専門書として知られる『Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders』(略称DSM)は、患者が直面する多岐にわたるmental disorder(精神障害)を説明しているが、トランプ大統領の場合、多くの精神科医たちの観察によると、明確に二つの症状が顕在する、すなわち『narcissistic personality disorder(自己溺愛的人格障害)』(略称NPD)と、もうひとつは『antisocial personality disorder(反社会的人格障害)』(略称APD)だ。

 NPD患者とは、自己の偉大さをつねに他人に喧伝したがる性癖を持ち、ある心理学者は雑誌インタビューで『トランプ氏はまさに典型的なNPDに相当する』と断定している。また、APDは病理的には『sociopathy』と呼ばれ、精神的トラブルの中では最も深刻で、他人への同情や思いやりを欠き、自己満足のためにサディスティックに相手を威嚇したり、傷つけたりすることをいとわない性格の持ち主だが、この点でも、ホワイトハウス入りして以来の彼の言動を見る限り、APD症状の露呈例は枚挙にいとまがないくらいだ」

 しかし、このようなトランプ氏の精神状態に疑問を呈する指摘がなされたのはもちろん、今回が初めてではない。

 すでに2017年10月には、全米の心理学者、精神分析医などの専門家27人が共同執筆した『The Dangerous Case of Donald Trump』と題する著書が大手出版社バーンズ・アンド・ノーブル社から出版され、大きな反響を巻き起こした。専門医たちはこの中で結論的に「大統領の精神的健康は米国民の精神的健康に影響を及ぼすものであり……彼(トランプ)は、アメリカを戦争に巻き込み、その病的危険のために、民主主義自体を損なう重大なリスクにさらしている」と率直に論じている。

 また、同著書の編集責任者でエール大学医学部助教授のブランディ・リー女史は、出版に際し、精神健康関係の学者や医師たち数千人にもコンタクトし、意見を聴取、大半の専門家たちが、大統領としてのトランプ氏の「精神的危険性」に懸念を表明していることを明らかにした。

 その後、新聞、雑誌、ネット報道含め、多くのメディアで、トランプ氏の「精神状態」に関する問題提起がなされてきた。

 昨年9月には、ウォーターゲート事件をスクープしたワシントン・ポスト紙の著名記者ボブ・ウッドワード氏がトランプ政権の内幕を暴いた著書『Fear』(日本語版タイトル『恐怖の男』)を出版、その中で側近たちの証言として、トランプ氏が小学5~6年程度の理解度しかないこと、政策に関する重要書類を用意してもまともな判断も下せないため、直接目に触れないよう大統領デスクからたびたび取り除いていること、相手構わず平気でうそをついて回ること、自らの言動を最大級の表現で自賛すること、いったん決めた方針を翌日には撤回することなど、尋常ならざるエピソードを数多く紹介している。


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