中東を読み解く

2019年10月26日

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なぜプーチンはエルドアンに肩入れするのか

 なぜプーチン氏はエルドアン大統領に肩入れするのか。同氏の中東戦略にとって、トルコは今やシリアと並んで最大の資産になっているからだ。プーチン氏はこれまで米国の同盟国であるイスラエルのネタニヤフ首相、トルコのエルドアン大統領との個人的な関係を強化してきた。特に、トルコは北大西洋条約機構(NATO)の一員であり、トルコを自陣営に引き込めれば、西側の団結に楔を打ち込むことになる。

 両者が親しくなったきっかけは2015年に発生したトルコによるロシア軍機撃墜事件だ。頭を下げたことがないといわれるエルドアン氏がプーチン氏に謝罪し、急速に接近した。背景には、米国に在住しているエルドアン氏の政敵ギュレン師の強制送還をトランプ政権が拒否したことなどから対米関係が悪化したことがある。

 エルドアン氏は今年7月、米国の猛反対を押し切ってロシアから最新の防空システムを導入、米国は懲罰として最新鋭戦闘機F35の売却を差し止めた。このエルドアン氏の行動はNATOの反発を呼び、トルコの除名も議論されるまでになった。プーチン氏にとってみれば、思い通りの展開である。そして今回、エルドアン氏の要求を聞き入れ、シリア北部の支配を承認し、さらに恩を売った。

 プーチン氏が中東の指導者に再評価されているのは、シリアに軍事介入して崩壊寸前だった同盟者のアサド政権を救い、最後まで支えたことだ。この点、米国が過激派組織「イスラム国」(IS)の先兵として血を流したクルド人をあっさり見捨てたのとは好対照だ。また普段、イランに対して攻撃的な言葉を浴びせながら、無人機を撃墜されたり、サウジアラビアの石油施設が攻撃されたりしても、報復行動をためらったトランプ政権とは違い、信頼できるという見方もある。

 プーチン大統領はトルコのシリア侵攻後の10月14日、トランプ政権と親しい関係にあるサウジアラビアを訪問し、サルマン国王と会談した。予定されていた日程だったが、石油施設攻撃やトルコの侵攻という重大な出来事が起きている中での訪問となり、武器のセールスや関係強化を図る上で絶好の機会となった。サウジ指導部には、米国が有事の際に本当に守ってくれるのかという不信感が芽生え始めているとも伝えられている。

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