日本独自の漆ロマン
曽爾村で漆が生産できれば、重要文化財を多く抱えている奈良、京都にある神社仏閣に供給できるという地の利もある。同時に漆の栽培をススキと並んで町おこしの切り札にしようと、9月19日の村議会で漆プロジェクトのための予算案を可決した。今後は村内で漆の植樹を行う計画で、将来的には古の「ぬるべの郷」の再興を図りたい狙いもある。今後は、漆搔きの終わった樹を使った染物が体験できる教室を開くなど、漆をPRして都会からの観光客を呼び込みたい考えだ。
漆器は「Japan」と呼ばれるなど、世界に誇る日本の文化として定着している。伝統工芸品として国が指定し、23の地域で生産されている。1970年ごろまでは漆は輪島塗など漆器に使われるなどして馴染みがあったが、その後はそうした漆器はプラスチックで代用されるようになり、漆器の多くは漆が使われていない合成漆器となった。
しかし、漆を塗った製品は独特の味わいがあり、経年変化と共に光沢が生まれるなど日本文化を支える伝統工芸としての渋い魅力がある。それだけに、消滅しかけた漆文化が文化財修復需要をきっかけに蘇る日が来れば、1300年以上の古から伝わる漆ロマンにタイムスリップして思いをはせることができるかもしれない。
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