チャイナ・ウォッチャーの視点

2012年4月4日

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三宅康之 (みやけ・やすゆき)

関西学院大学教授

1969年生まれ。京都大学博士(法学)。専攻は現代中国政治外交。著書に大平正芳記念賞を受賞した『中国・改革開放の政治経済学』(ミネルヴァ書房、2006年)などがある。

 毎年3月に開催される全国人民代表大会は香港地区代表も出席し、北京の指導者や香港問題責任者と接触する場である。3月14日、温家宝総理は全人代会議閉幕にあたっての記者インタビューの中で行政長官選挙に触れ、「香港市民の多数が支持する」行政長官が選ばれるだろうと答えた。この答えは事実上、次の2点を意味する。ひとつは北京当局が市民支持率調査を意識していること、今ひとつは民意調査で滑落したタン氏に引導を渡したことである。

 さらに中共中央直属の香港・マカオ協調工作小組(組長は習近平国家副主席)の副組長を務める劉延東中共中央政治局員・国務委員が3月22日深セン入りし、選挙委員に対し、リョン氏支持を求めたという。

人心を得て、その辣腕をふるえるか

 結果はリョン氏が勝利したわけではあるが、民意を受けたためだったとは言えまい。市民支持率は30~40%ほどで絶対的な人気があったわけではない。行政経験が皆無のため、リョン氏は政府官僚の人心も得ていないようである。また実際に投票した1200名足らずの選挙委員についても25日の選挙でリョン氏が獲得したのは689票、タン氏の獲得したのは285票であり、結果だけ見れば大差ではあるが、3分の2どころか700票にも達しなかったのは、香港政治の文脈ではいかにも低い結果である。

 リョン氏が7月1日の就任式までに香港の人心を得て、左派だからこそ北京に対しても唯々諾々とならず、経済格差、住宅問題など香港の諸問題の解決に辣腕をふるうことができるのか。それとも人心を得ぬまま強引な手法で各方面と対立して行政運営を空転させ、さらには混乱状況に陥れてしまうのか。香港の明るい未来を祈りつつ、日本から見守りたい。

◆本連載について
めまぐるしい変貌を遂げる中国。日々さまざまなニュースが飛び込んできますが、そのニュースをどう捉え、どう見ておくべきかを、新進気鋭のジャーナリスト や研究者がリアルタイムで提示します。政治・経済・軍事・社会問題・文化などあらゆる視点から、リレー形式で展開する中国時評です。
◆執筆者
富坂聰氏、石平氏、有本香氏(以上3名はジャーナリスト)
城山英巳氏(時事通信中国総局記者)、平野聡氏(東京大学准教授)
森保裕氏(共同通信論説委員兼編集委員)、岡本隆司氏(京都府立大学准教授)
三宅康之氏(関西学院大学教授)、阿古智子氏(早稲田大学准教授)
◆更新 : 毎週月曜、水曜

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