虚報と父の自殺の深層に迫っていく
ひき逃げ事件の妻役の小芝風花の演技が光る。虚報事件について、取材にきた、ネットメディア・ファクトジャーナルの編集長である三反園邦雄(松山ケンイチ)に語るのだった。
「朝起きると、特命の掲示板を見るのが日課になってしまって、見ちゃいけないのは分かっているんですけど。悲しみが怒りになって、何度か続くと寂しさになって、薄皮がはがれるようにして、感情がなくなってくるんです。まるで自分のことじゃないみたいで……」
沢村の父で全国紙の大日の社会部長を務めた、一平(角野)と同期の垣内智成(イッセー尾形)の自殺がきっかけとなって、ドラマの奥行きはさらに深くなっていく。
生前に垣内は、やはり同期の相賀正和(長塚京三)に「話したいことがある」と言い残したまま逝ったのである。
相賀(長塚)は、垣内の離婚した妻からひとり暮らしの彼の部屋の遺品整理を頼まれた。垣内が抱えていた謎に迫ろうと考えたのである。たまたま、やはり垣内の部屋を訪れた、沢村(松田)に対して、16年前の父・一平(角野)の死について語るのだった。
垣内(イッセー尾形)と、新神奈川に転職する前の桐野(筒井)は、東都銀行の不正融資事件を追っていた。頭取と専務派に対抗する常務から、証言は得られたが、物証がなかったことから、社会部長だった一平(角野)は報道にストップとかけた。その直後に、桐野が、専務が反社会的勢力からの脅しによって、融資を決めた証拠の文書を持ち帰った。常務からもらったというのだった。
専務の筆跡が、桐野のものに似ていることに、相賀(長塚)が気づいた。桐野のねつ造である。しかし、大日はこの事実を隠して、桐野は新神奈川への転職を許すことで済ませた。
「隠ぺいするほど、組織は腐っていく」と、相賀はいう。亡くなった同期の垣内の言葉でもあった。
第3回「霧の中」(11月17日)に至って、フェイク・ニュース作りを教える「メイク・ニュース」のサイトの主宰者が、新神奈川を退社した桐野(筒井)ではないか、という疑惑が浮上する。真偽を問い詰める沢村(松田)に、桐野はうそぶくのだった。
「武器を作る方が悪いのか、武器を使う方が悪いのか」と。
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