学び続ける意欲があるか否か
18年秋から19年春まで新卒採用の態勢を急いで整えるうえで、ターゲットを次のものとした。「エンジニアで、プログラミング言語のScala(スカラ)の基本をマスターしている学生」。Scalaはオブジェクト指向言語と関数型言語の特徴を合わせて作られた。最近はScalaを採用するIT企業が日本でも増えているといわれるが、Scalaエンジニアは少ない。
この時点で、関西の専門学校2年生の男子(20歳)がクローズアップされた。学生は、内田氏が入社するよりも数か月前に関西地域で開催された「採用イベント」に参加していた。その場で複数のIT企業が目をつけていたようだ。イベントに参加したChatworkのエンジニアも、高く評価していた。
それは、Scalaの基本を心得ていたことに加え、次の点を兼ね備えていると思えたからだ。
「自らの課題や問題点を自分で見つけ出し、克服しようとする意志や意欲を持っている」
「反骨精神(社内のエンジニア勉強会などで、他者と比べて自分がどのレベルなのかを把握したうえで、スキルアップしたいと考え、自身でエンジニアリングスキルを磨こうとする姿勢など)
「Chatworkにエンジニアとして入社したい、という明確な考えがある」
「Chatworkのカルチャーにマッチしているように思える」
内田氏は、エンジニアの採用責任者である執行役員兼開発本部長らと密な話し合いを続け、この学生に正式にアプローチをすることを決めた。
1次面接(1月実施)は、大阪オフィスで1対1(マネージャー:学生)で、約1時間。「エンジニア同士の会話をすることが狙い」(内田氏)だった。面接前に、マネージャーが重点的に確認したのはスキルと学び続ける意欲があるか否か、いわば自走式な人材であるかどうかだ。そのうえで「ベンチャー企業志向であるか」「素直に自分の問題点や課題を振り返ることができるか、その意味で上司が育成できうる人材であるか」などだ。
2次面接(4月実施)は、東京オフィスで2対1(執行役員兼開発本部長、人事総務部(内田氏):学生)で、約1時間。ここでも確かめるのは、「自力で走ることができる人材であるか」だ。自ら学ぶことができるか否かが、大きなポイントになる。
内田氏は「開発本部長は、あえて、プログラム言語についてややレベルの高い質問をした。学生は、懸命に答えようとしていた。そこに素直で、誠実で、ひたむきさを私たちは感じた」と語る。自らが前職での採用試験やインターンシップに関わった経験をもとにこう説明した。
「私個人の考えだが、ひとりよがりの人や他責(他者のせいにする)の人は、入社後に伸び悩むと思う。面接では、他責であるか否かを確認するためにたとえば、“(卒業した)高校や(卒業見込みの)専門学校を選んだのはなぜですか?”などと聞く。回答についてさらに“それはなぜ?”と尋ねると、選択をするうえでの本音が見えると思う。人や周囲のせいにするような人であるかも見えてくる」