2024年12月22日(日)

Wedge REPORT

2019年8月28日

 今回は、「老後を生きていくために2000万円が必要か」をテーマに、社会保険労務士の中村紳一さん(56歳)を取材した。中村さんは多くの中小企業経営者から厚生年金や国民年金を始めとした社会保障制度、社員の給与や賞与、退職金についての相談を受ける。一方、社員からも労働相談などを請け負い、老後の助言もする。2011年からは、埼玉労災一人親方部会(厚生労働大臣承認・埼玉労働局承認)の理事長を務める。

 中村さんは1989年、27歳で社会保険労務士・行政書士として開業し、30年を超える。2015年、腎臓を患い、生体腎移植の手術を受けた。ドナーは、妻だった。現在は身体障害者1級の扱いとなり、常に身体障害者手帳を持ち歩く。

(takasuu/gettyimages)

稼ぐ力がないと1億円があったとしても、不安かもしれませんね

中村紳一さん

 「老後を生きていくために2000万円が必要」なんてことは、はるか前からわかっていたのではないでしょうか…。あれほどに騒ぐことではないように思います。60代以降も、健康で、収入を稼ぐ力があるならば2000万円もいりませんよ。本当にその意味の力がある人は、蓄えがゼロでもいいのかもしれない。稼ぐ力がないと1億円が手元にあっても、不安かもしれませんね。

 すでに高齢社会に入っているのですから、本来は10代の頃から、生涯において稼ぐ力を身につけておくべきなのです。ところが、日本では義務教育でも、お金について教える機会が依然として少ない。

 私の労務や年金の相談の経験をもとに言えば、大企業の社員は「老後を生きていくために2000万円が必要」といった議論を冷静に受けとめている人が多いように思います。毎月の給与や年数回の賞与、退職金の額、福利厚生は中小企業のそれよりもはるかに恵まれていますからね。中小企業の社員の場合は、老後のことをどこまで真剣に考えているのか、わからない部分があります。賃金や賞与の額、福利厚生、退職金をみると、2000万円を貯めるのはなかなか難しいように思います。退職金制度がない会社が多いのですから…。

 シビアな見方をすると、そもそも、中小企業に定年まで勤務することに私は理解ができないものがあります。私が仕事で接してきた中小企業の社長で、社員の老後を真剣に考え、「定年時に2000万円を残してあげないといけない」と思っている人はひとりもいませんでした。そのような方がいるならば、お会いしたいくらいです。社長がこのレベルならば、社員の側も生活や老後のことを考え直すべきでしょう。


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