2024年11月22日(金)

Washington Files

2019年12月16日

名前を公表することは保護法で禁じられた「報復行為」に相当する

 これに対し、告発された当該行政機関の場合、名前を公表すること自体が保護法で禁じられた「報復行為」に相当すると解釈される。

 とくに情報機関の内部告発については、同保護法に加え、「大統領政策指令第19号Presidential Policy Directive19」(PPD19)(2012年発令)と呼ばれる特別保護措置が講じられており、あらゆる情報機関を対象に部内の告発者に対する報復を禁じている。この「PPD19」の下では、告発の「出所source=名前」を明かすことも処罰対象となる。

 私人であるトランプ・ジュニア氏が実名を公表したのに対し、実父の大統領が自ら名前を出さないのは、この大統領指令が目障りな存在になっているからだと推定される。オバマ前政権当時に発令されたとはいえ、後任の大統領自身が率先してこれを踏みにじることになれば、マスコミの猛批判を受けることは必至だ。

 このような“内部告発先進国”のアメリカと比べ日本では今日、内部告発者が解雇や左遷、減俸などを余儀なくされ、泣き寝入りせざるを得ないケースが珍しくない。言い換えれば内部告発者を守る制度が十分でないため、内部告発がしにくい環境にある。

 遅ればせながら2004年には、諸外国からの批判を受け初めて「公益通報者保護法」が成立した。しかし、告発された企業や官庁が「犯人捜し」を行ったとしても、明確な罰則規定はない。このためわが国では、大手企業や政府各省でのデータ改ざん、虚偽報告などが、いぜんとして後を絶たないのが実態だ。

 なお、トランプ大統領を弾劾にまで追い詰めた「告発者」はホワイトハウスに勤務後、

CIAの現職に復帰したと報じられたが、現在もなお勤務中かどうか、居住場所、近況なども含め、CIAスポークスマンは一切コメントを避けている。

 そして今回の歴史的事件のカギとなったこの重要人物の正体は、いつの日にか本人が名乗り出ない限り、今後も永遠に世間の前にさらされることはないだろう。

  
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