2024年11月22日(金)

Wedge REPORT

2019年12月27日

野球の街を変える 岡田氏に頼らない“チーム力”

 だが実際チーム経営に関しては、球団購入時に比べて現在のチームの価値はジョーダン氏がオーナーとなって以降約7.5倍高まったと一部メディアでは言われている。だが本拠地シャーロットの市場規模もあり、それでもリーグ下位に留まっている。さらにはチームが勝利出来ず、「型」を示すことが出来なければ批判の対象になる。最近は地元の貧困地域に医療施設やバスケットボールコートを作るなど地域を第一に置いた活動が増えてきている。それで風向きも変わってきている。そして今年9月に約97%所持していた球団の株を一部売却して新たにテクノロジーに長け、新たな資源やアイディアをもたらしてくれる投資家2人をチームに加えた。今後現場レベルでいかに変わっていくのかは注目だが、チーム経営の面で人材を加え文化を変えた形は岡田氏がいち早く今治で着手したことだ。

 サッカー日本代表を率いた上、横浜FマリノスでJ1優勝監督となった岡田氏も成功は確約されていない。他スタッフも岡田氏に頼らないクラブ経営をする大切さを口々に語っていた。そして岡田氏は誰よりも“人材”の重要さを理解していた。社長に2000年から2009年までゴールドマンサックスで債権の営業をしてきた矢野将文氏を招聘。執行役員を転職サイト「ビズリーチ」を活用して、優秀な仲間を意識的に集めている。

 矢野氏は愛媛県出身ではあるものの、今治にきたのは初めてだった。当初は閉鎖的な地方都市の一面も持つ今治にとっては“よそ者”に対する警戒心は少なからずあった。「野球の街でしたから何しに来たんだ?という反応が最初は強かったです。岡田武史さんがゼロからクラブを作るということでまずは企業の方々にワクワクしていただきました。東京から三菱商事やLDHといったスポンサーを連れてきて、地元の企業がこれは大変なことになるなと感じていく流れでした」

 当時、スタジアムに駆けつけてくれていたサポーターは数十人。今治という街はサッカークラブにすがる必要のない街を代表するコンテンツが多く存在する。国内外から観光客を多く呼び込むしまなみ海道、全国に知れ渡る今治タオルのブランド、日本を代表する今治造船。さらにはゆるキャラのバリィさんも一躍今治を有名とした。

 地域のスポーツの特色にしても、今治は野球の街。試合日にスタジアム周辺のサンワカンパニーフードコートに集う方々に話を聞くと「高校野球で甲子園出場も経験している今治西高校の存在もあり、今治には野球を大切にしている人が多い」と答える人も1人ではなかった。

 「岡田さんが描いた夢とビジョンを集まってきたスタッフとひたすらやってきました。活動が地域課題を解決するきっかけにしたいというビジョンでした。クラブ経営としてやるべきことをやって、住民の心に響き、生活をちょっとだけでも元気にする思いでやりました。人材採用、スポンサー獲得、ホーム試合の運営、あらゆることに力を注ぎました」と矢野社長は振り返る。


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