Wedge REPORT

2019年12月21日

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 ゲームはプレイするだけではなく、観戦するという一面が注目され始めた。

 PCゲームを用いて対戦形式によって勝敗を決めるeスポーツが近年、海外を中心に注目されている。日本においても、2019年の「いきいき茨城ゆめ国体」の文化プログラムに選ばれ、47都道府県の予選を勝ち上がった「選手」が競うなど、「競技スポーツ」としての認知が高まっている。日本eスポーツ連合の試算によると、18年に約44億円だった国内eスポーツ市場は、22年までに倍増するとの見通しだ。

 国内でeスポーツ熱が高まる中、地方におけるeスポーツ振興の「先進モデル」と称されているのが、富山県だ。そこにはゲームで地域を巻き込む〝秘策〟があった。

「ファボーレ富山」で開催されたeスポーツ大会。多くの買い物客が足を止めて観戦していた

”オール富山”で挑め地域を巻き込む活性術

 富山県は競技団体や地元テレビ局と組んで、19年9月に5G実証実験を兼ねた「Toyama Gamers Day 2019/5G COLISEUM」を高岡市で主催した。会場は北陸新幹線新高岡駅から徒歩10分の県内最大級のイベントホール。2日間で大会参加者、来場者含め約3500人が集まった。また、約700人の大会参加者(プレイヤー)のうち4割が県外からの参加だ。

 大会主催者であり、県内におけるeスポーツ振興の仕掛け人である富山県eスポーツ連合の堺谷陽平会長は、同イベントについて「”オール富山”にこだわった。音響、照明、会場設営など10社近くの企業が関わっているが、全て地元の企業」と語る。「都会の企業に頼めばノウハウもあるし、コストも抑えられたかもしれないが、今後も継続的にイベントを実施していくために、地元にノウハウを蓄積したかった。また、地方であってもこれだけのイベントが作れるということを全国に向けて発信したかった」(堺谷氏)

 16年の初開催時は予算5万円、参加者100人からスタートした同イベントだが、「イベントを通してeスポーツを広めたいので協力してくれないか」と堺谷氏が富山テレビ放送に依頼したことが、急成長を遂げるきっかけとなった。「我々はゲーマー同士のコミュニティーを持っているので大会参加者を募ることはできるが、会場設営や照明、音響などのノウハウがなかった。地元メディアと一緒にイベントを作っていくことで、そういった部分をフォローしてもらった」と語る堺谷氏。18年には富山テレビ本社内ホールにて「富山ゲーマーズデイ2018」を開催し、照明や音響を同社スタッフが担当した。「地方でもこれほど質の高いイベントができるのか」と、当時参加した全国のゲーマーが驚き、SNSを中心に話題になった。富山テレビ放送営業局の山田勉取締役事業局長は「スポーツは地域にとって文化そのもので、eスポーツも同様だ。その分野で頑張っている人が地元にいるのであれば、メディアとして応援し続けたい」と参画の意義を語る。

 富山eスポーツ連合と富山テレビ放送は、11月24日、富山市の大型商業施設「ファボーレ富山」でeスポーツ大会を開催した。週末には1日約7万人の買い物客が行き交う同施設のリニューアルオープン記念イベントとして行われ、事前申込制の本大会とは別に、当日参加者も自由にゲームを楽しめるフリースペースも確保された。優勝をかけた決勝戦では、プロの実況にも熱が入り、多くの買い物客が思わず足を止め見入っていた。

 偶然通りかかった60代男性は「実況解説のおかげでルールが分からなくても楽しめる。『ゲームは家でやるもの』といったイメージが変わった」と感想を述べた。小学生の息子と観戦しにきた主婦は「この子は運動が苦手。eスポーツならチームを組んで友達と一緒に大会に出場できると聞いた。熱中できるものを通じて友達とコミュニケーションをとってくれたらうれしい」と語る。

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