2024年6月17日(月)

Wedge REPORT

2019年12月21日

eスポーツ×観光資源 若者文化と伝統文化の相乗効果

 eスポーツを通じて地元の観光開発に取り組む動きもある。富山県八尾町の名物である「おわら風の盆」。およそ300年前から伝わる伝統文化で、毎年9月には、越中おわら節の旋律に合わせ踊り手たちが洗練された踊りを披露しながら町を練り歩き、3日間で25万人の見物客が訪れる。19年5月、八尾町観光協会と富山eスポーツ連合が協力し、東京のeスポーツイベントで「おわら風の盆」の踊りを披露した。会場の富山ブースの一角で踊り子が踊っていたところ、興味を持ったゲーマーたちも輪になって一緒に踊り始めた。

 9月には県内外からeスポーツのプロプレイヤーを招き、空き家となっていた古民家を提供し、合宿を開催した。プロと対戦できるとあって、県内のコミュニティメンバーも八尾町を訪れた。合宿参加者は、最終日に八尾町内の観光名所を散策し、茶道体験などを経験することで、八尾町の観光資源に触れた。あるプロプレイヤーは生まれて初めての茶道体験に強く心が動かされたとのことだ。

八尾町の古民家で行われたeスポーツ合宿。地元ゲーマーも対戦に訪れた(富山県 eスポーツ連合提供)

 「eスポーツがなければ、彼らと八尾町の接点も生まれなかった」と話すのは、越中八尾観光協会の杉山峰夫会長。「伝統文化や技術の継承者不足が地方における課題となっているが、これまでの日本では年配者が若者に伝統や文化を押し付けてきた部分もあるのでは。我々年配者が培ってきた知識や知恵で若者をサポートしていくような関係を築いていきたい」と語る。将来的には海外のプロ選手を招いたeスポーツ合宿を開催し、八尾町をeスポーツの聖地とすることが夢だという。

 日本eスポーツ連合の岡村秀樹会長は、地方におけるeスポーツ振興について「企業、自治体、コミュニティーそれぞれの立場から協力しながら、地道な積み上げを重ねていくことこそが地域に定着する近道だ」と語る。

 現在発売中のWedge1月号の特集では、県庁職員と青年会議所のメンバーが主導してeスポーツイベントを開催し、人通りの減った商店街の賑わいづくりに取り組んだ徳島県や、別府温泉でイベントを開催し、会場に足湯を引くなど観光資源の活用を実践した大分県などの取り組みも紹介している。

 デジタル時代の新スポーツが、地方活性化のカギとなるか。地域の子供と老人がコントローラーを手に、観衆の前で勝敗を競い合う。そんな日が来るかもしれない。

現在発売中のWedge1月号では、以下の特集を組んでいます。全国の書店や駅売店、アマゾンなどでお買い求めいただけます。
■スポーツで街おこし  プロ化だけが解じゃない
Part 1  独特の進化を遂げる日本のスポーツに期待される新たな役割
Part 2      INTERVIEW 川淵三郎氏(元日本サッカー協会会長)
     プロリーグ化に必要な4本柱 地域密着がクラブ経営の大前提
Part 3      先進事例に学ぶ 「おらが街のチーム」の作り方
Part 4      INTERVIEW 池田純氏(横浜DeNAベイスターズ初代球団社長)
     スポーツで地域活性化 成否を分けるカギとは?
Part 5  岐路に立つ実業団チーム 存続のカギは地域との連携
Part 6  侮れないeスポーツの集客力 街の賑わい作りに貢献

  
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◆Wedge2020年1月号より


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