AI教材で授業時間が半分に!? 麹町中の授業改革
ある中学校の授業風景。数学の先生は黒板に数式を書き、生徒は皆一斉にノートに書き写している。教室の片隅に目をやれば、授業についていけていない生徒がひとり。
「何が分からないかが分からない」
そんな生徒自身でも気づけない〝つまづき〟をAIが分析し、理解できていない箇所までさかのぼって学習させてくれる教材があればどうだろうか。
宿題や期末試験、クラス担任制の廃止など、公立中学校でありながら前例にとらわれず大胆な教育改革を実施している麹町中学校(東京都千代田区)。同校では生徒の基礎学力を最短で伸ばすためにAI教材「キュビナ(Qubena)」を導入している。
AI教材とは、生徒が問題を間違えると、その原因をAIが分析・推定し、学年や年齢によらず、生徒の習熟度に沿って教材を提供するソフトウェアを指す。一般的な授業形式では先生が黒板を用いて全生徒に対して同じ内容を伝達するが、AI教材を用いた授業では端末を通して生徒ひとりひとりの学習状況に合った内容を伝達する。たとえば、中学3年生の授業であっても、ある生徒のつまづきの原因が中学1年生の授業範囲にあるとAI教材が判断すれば、その範囲までさかのぼって教えてくれるのだ。
麹町中学校の授業ではグループごとに生徒が集まり、タブレットを手にそれぞれの理解度に合わせて出題される問題を解く。先生は手元の教師用端末で全生徒の学習進捗度が把握できるので、つまずいている生徒のもとに行って的確なサポートができる。生徒間で互いに教え合っている姿も目につき、通常行われる板書主体の授業より教室には活気がある。授業終わりに「今日は94問も解けたよ!」と先生に嬉しそうに報告する、ある生徒。自分の学習成果や進捗を可視化できることもキュビナの特徴のひとつだ。
麹町中学校ではキュビナの導入により、数学では年間指導計画に基づく従来の授業時間から約半分に短縮できた(下図)。空いた時間を活用することで、次の学年の学習範囲や創造的な学習など、新たな分野の学びに時間を割くことができるようになった。