Wedge REPORT

2019年12月21日

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 クラブチームの経営課題として、「試合のない日」に売り上げをいかにして立てるかという問題がある。この課題解決に向けて取り組んでいるのが、来季からJFLへの昇格を決めた福島県のいわきFCだ。グラウンドに隣接するクラブハウスを全国初となる商業施設併設型にすることで、試合のない日にもクラブ関連施設の周遊を図り、お金が落ちる仕組みを作った。

クラブハウス内の飲食店からは、グラウンドが一望できる(©IWAKI FC)

 いわきFCは、東日本大震災の復興支援をしていた米スポーツブランド「アンダーアーマー」の日本総代理店であるドームの安田秀一社長が「復興から成長へ」と、2015年12月に誕生させた。アンダーアーマーは、プロ野球の読売巨人軍をはじめ多くのスポーツチームのスポンサーになっている。「ゼロからチームを作れば、思いを直線的に表現できる」と同社にとっていわきFCは力を入れた事業だ。

 商業施設には、英会話教室や車のディーラーが入っている。3階に入居する飲食店のテラス席からはグラウンドでの試合を観戦でき、試合がある週末には満席近い状態となり、1000人が来場する。クラブが整形外科診療所と柔整院を開設し、地域の医療等の需要に応えている。こうした仕組みが奏功し、年間約35万人が足を運んでいる。

 施設内にトレーニング施設も併せ持つ利点を活用し、サッカーに限らないあらゆる競技の合宿誘致も進めている。ラグビーワールドカップの際には、サモア代表が事前合宿地として利用し、地元の子どもたちとの交流会も行った。近隣には「スパリゾートハワイアンズ」をはじめとする温泉施設もあることから、地域との連携して誘致を図っている。いわき市と連携し、東京五輪・パラリンピックの事前合宿誘致にも取り組みたい考えだ。

 商業施設にはアンダーアーマーの直営アウトレットも出店して、自社製品の売り上げ拡大も図る。なお同社は、チームの発足に先立ち全国2カ所に分散していた物流センターを同エリアに集約し、経営の効率化と復興の後押しを行っている。

 まさに地に足が着いた経営で、地域を活性化することにより、ブランドイメージの向上を図り、スポンサーとしてのメリットも享受できる形にしているのだ。

「ボランティアではなく、企業活動の一環としてサステイナブルにお金が生まれる仕組みにしたかった。サッカーチームを作り、自社製品を広めながら地域の復興につながるやり方を考えた」と同社でプロジェクトを手掛けてきた今手義明取締役は語る。

 今手氏は「いわきのモデルが成功したら、全国に横展開したい」と胸の内を明かす。同時にいわきFCを運営するいわきスポーツクラブの大倉智社長は「震災をきっかけにできたチームなので、J1昇格が目的ではない。復興から成長に向けた環境作りにまい進していきたい」と、地域のためのクラブ運営という新しい形を模索し続ける。

■修正履歴:Wedge1月号26頁に記載の「形成外科や鍼灸院の入った診療所」は正しくは「整形外科診療所と柔整院」でした。訂正し、お詫びいたします。該当箇所は修正済みです。

現在発売中のWedge1月号では、以下の特集を組んでいます。全国の書店や駅売店、アマゾンなどでお買い求めいただけます。
■スポーツで街おこし  プロ化だけが解じゃない
Part 1  独特の進化を遂げる日本のスポーツに期待される新たな役割
Part 2      INTERVIEW 川淵三郎氏(元日本サッカー協会会長)
     プロリーグ化に必要な4本柱 地域密着がクラブ経営の大前提
Part 3      先進事例に学ぶ 「おらが街のチーム」の作り方
Part 4      INTERVIEW 池田純氏(横浜DeNAベイスターズ初代球団社長)
     スポーツで地域活性化 成否を分けるカギとは?
Part 5  岐路に立つ実業団チーム 存続のカギは地域との連携
Part 6  侮れないeスポーツの集客力 街の賑わい作りに貢献

  
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◆Wedge2020年1月号より

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