お通しはどう見られるか
居酒屋で頼みもしないのについてくるお通しとそのチャージについては、すでに色々と話題になっているようだ。一人500円程度だから、法外なものではないけれど、後出しされるとやはり気分は良くないだろう。
どこかのライターさんが書いていたように、「一人〇〇円のテーブルチャージがつきます、その料金には小さな前菜が含まれます」というような英語の張り紙を出す、というのに大賛成だ。ご参考までに、英訳をつけておく。
We have a table charge of 〇〇 yen per person. Small appetizer is included in this charge.
イタリアではお店によっては、パン代と称して一人3ユーロほどのテーブルチャージがつけられることもある。だからきちんと事前に説明しておけば、不快なトラブルは避けられる。
テイクアウトに対する違いは
もう一つ、日本で外国人が困る習慣の違いは、お持ち帰り、テイクアウトだ。日本ではテイクアウェイとも言われるが、アメリカ英語ではテイクアウトのほうが一般的で、take-out あるいはtakeoutとつなげてスペルすることもある。
特にアメリカでは、レストランでお客が食べ切れなかったものを包んでもらって持って帰ることは、珍しくない。たくさん残してしまうと、相手のほうからWould you like to take it home?(お持ち帰りしますか?)と聞いてきて、アルミホイルなどの容器に入れて袋に包んでくれる。
余談だが、かつてはこうして残り物を包んでもらう習慣をDoggie Bag(持って帰って犬にあげる、という意だった)と呼んだけれど、今ではあまりこういう言い方は好まれない。(だいたい犬にはやたらと味の濃い人間の食べ物を与えてはいけない、という時代になった)It was so good. I don’t want to waste it.(美味しかったので無駄にしたくないです)と言えば、ニッコリ頷いて包んでくれる。
日本の飲食店では、食べ残しを包んではくれないお店がほとんどだ。持ち帰って食べることの衛生上の責任問題になるのだろう。
幸いなことに、と言うべきか。日本の一人前は海外の量に比べて少な目に設定されている。だからよほど体調不良でない限り、外国人にとって食べきれなかった、ということはないだろう。それでも食べ切れなかったので持って帰りたいというお客には、「Sorry, we don’t have takeout containers.(すみませんが、うちにはお持ち帰り用の容器の用意がないんです)」などと説明しなくてはならない。
お持ち帰りをやっていないのならば
もっと困るのは、日本のレストランの大多数はそもそもテイクアウトを請け負わないという現実である。
アメリカでは、ファストフードだけでなくほとんどのレストランでテイクアウトの選択をすることができる。注文時にテーブルにつかずに受付で「テイクアウトで」と言えば、スープ、サラダ、ステーキ、パスタなど何でも容器に入れて、さらに手提げ袋に入れて持たせてくれる。そんな国から来ると、日本では通常のレストランではテイクアウトができない、という事実をそもそも想像もしていないのだ。
築地にまだ魚市場があった当時、アメリカ人の友人を案内して入った海鮮丼の店で、若い外国人の男性が一人ぽつんと腰掛けていた。店員が「お待ち!」と丼をテーブルに出すと、男性は当惑したように「No, I ordered to take-out.」(テイクアウトでお願いしたんだけど)と言う。店員は「Yes, Yes」と答えながら奥に入ってしまった。
聞けば一緒に日本に来た友人が体調を崩し、ホテルで待っているという。
「こちらの方は、お持ち帰りでお願いしたそうですけれど」
筆者が奥にそう声をかけたら、驚いたことに先ほどYes, Yesと答えた店員が「うちは持ち帰りはやってないよ!」とつっけんどんに怒鳴った。
それなら一体何がYes, Yesだったのか。
こんな店で食べるのはやめよう、と友人と、ついでにその外国人男性と連れ立って外に出た。築地の場外の小さな寿司屋、海鮮丼屋で軒並み聞いてみたのだが、どこも似たような答え。テイクアウトはやっていないという。