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2020年1月4日

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磯山友幸 (いそやま・ともゆき)

経済ジャーナリスト

1962年東京生まれ。1987年早稲田大学政治経済学部卒業。日本経済新聞で証券部記者、同部次長、チューリヒ支局長、フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長・編集委員などを務め、2011年3月末で退社、独立。現在、経済政策を中心に政・財・官を幅広く取材、各種メディアに執筆するほか、講演やテレビ出演、勉強会の主宰など幅広く活躍している。オフィシャルHP(http://isoyamatomoyuki.com/)

著書に『2022年、「働き方」はこうなる』(PHPビジネス新書)、『理と情の狭間 大塚家具から考えるコーポレートガバナンス』(日経BP)、『国際会計基準戦争 完結編』(日系BP)、『ブランド王国スイスの秘密』(日経BP)など。共著に『オリンパス症候群 自壊する「日本型」株式会社』(平凡社)、『株主の反乱』(日本経済新聞社)などがある。

早稲田大学政治経済学術院(大学院)非常勤講師、上智大学非常勤講師。ボーイスカウト日本連盟理事。静岡県ふじのくにづくりリーディングアドバイザーも務める。

日経ビジネスオンライン(日経BP)、現代ビジネス(講談社)、フォーサイト(新潮社)、月刊 WEDGE(ウェッジ)、月刊 エルネオス(エルネオス出版)、フジサンケイビジネスアイ(産経新聞社)などに連載コラムなどを持ち、定期執筆している。

 イタリア北西部のピエモンテ州。バローロやバルバレスコといったイタリアを代表するワインの銘醸地である。緩やかな大地のうねりを覆うようにブドウ畑が広がり、レンガ色の古城や教会、農家が点在する景観は、世界遺産にも指定されている。

抜けるような青空のもとに広がるブドウ畑(写真・筆者、以下同)

 そんなピエモンテで、ひとりの日本人がブドウ畑を買い、ワインづくりに乗り出した。佐々木ヒロト(裕人)さん。イタリアに惚れ込み、住み始めて22年になる。ワインを中心にイタリアのこだわりの逸品を、日本に紹介する「アニマ」という会社を興し、イタリアと日本の橋渡し役を務めてきた。

 根っからのワイン好き。いつの日か自分自身でワインを造りたいと思い描いてきた。その夢がついに現実になろうとしている。

 3500平方メートルのぶどう畑が付いた農家を手に入れたのは2017年末のこと。丘の上にある古い農家の建物を全面改装しながら、斜面に広がる畑のブドウの世話をする。除草剤は使わず、化学肥料も与えない自然栽培。病気予防も伝統的な自然由来の薬剤を使うだけ。雑草を刈り取る作業は重労働だ。ワインにして2000本分ぐらいのブドウが収穫できる。

 昨秋、実験的に栽培・収穫したブドウは、醸造容器に入れ、友人の蔵で寝かせている。栽培するブドウの品種は主としてモスカート。一般的な甘みを残す醸造法ではなく、ドライな仕上がりを目指す。

【佐々木ヒロト(ささき・ひろと)】
1965年東京・八王子で生まれ。ニュージーランドへのワーキングホリデーなどを経て97年、シエナ大学でイタリア語を勉強。2002年にイタリアで起業した後、12年に独立。

 「イタリア人は職人気質(かたぎ)で、モノづくりで妥協しないんです」と佐々木さん。イタリア各地の生産者を訪ねて、モノづくりへの「思い」を聞き、貿易業者を通じて日本の消費者にストーリーと共に伝えていく。その価値を知る消費者とつながり、安定的に売れるようになれば、生産者は価格勝負の安売り競争に巻き込まれずに済む。

 「適正な価格を払って良いもの、安全なものを手に入れたいという日本人はまだまだ多い」と佐々木さん。ワインのほか、オリーブオイルや醸造酢、生ハムなどを日本の輸入業者につなぐ。

 イタリア北東部フリウリ・ヴェネツィア・ジュリア州のダミアン・ボドヴェルシッチ氏のワインと出会ったのは衝撃的だったと佐々木さんは振り返る。01年のことだ。「飲むと笑顔になる、幸せになれるワインだと思った」と語る。

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