危険な賭け
ガンツ氏とネタニヤフ首相の密約ともいうべき合意の内容はどうなっているのか。現地メディアなどによると、ネタニヤフ首相はこれまで、3年間の連立内閣を提案し、最初の1年半をネタニヤフ氏が、後半の1年半をガンツ氏がそれぞれ交代で首相を務める内容という。
首相はさらなる選択肢として、6カ月間だけ「非常事態内閣」を発足させ、コロナ危機に一段落つけた後、最終的に「本格的政権のための協議に入るか、4回目の選挙を行うかを決める」という案も提示している可能性がある。イスラエル史上最長の計14年近くも首相を務めるネタニヤフ氏が続投することになれば、通算5期目という長きにわたり権力の座にとどまることになる。
今後はガンツ氏が国会議長を務める間に、次期政権のポスト配分などの具体的な協議に入る見通しだが、最大の問題はネタニヤフ氏が最初に首相を務めた場合、約束を守ってガンツ氏に首相の椅子を明け渡すのかどうかだ。とりわけ、それまで自身の刑事裁判に決着がついていない時は、ネタニヤフ氏が約束を反故にする可能性は十分あると見られている。
ネタニヤフ首相はコロナ危機に襲われるイスラエルを沈没する「タイタニック」になぞらえ、氷山をかわして切り抜けるタイタニックの船長として自らを国民に売り込んだ。そうしたネタニヤフ首相のタイタニックに乗り込むガンツ氏にとって、その航路は危険な賭けに満ちたものになるだろう。
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