2022年8月13日(土)

韓国の「読み方」

2020年4月7日

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澤田克己 (さわだ・かつみ)

毎日新聞記者、元ソウル支局長

1967年埼玉県生まれ。慶応義塾大法学部卒、91年毎日新聞入社。99~04年ソウル、05~09年ジュネーブに勤務し、11~15年ソウル支局。15~18年論説委員(朝鮮半島担当)。18年4月から外信部長。著書に『「脱日」する韓国』(06年、ユビキタスタジオ)、『韓国「反日」の真相』(15年、文春新書、アジア・太平洋賞特別賞)、『韓国新大統領 文在寅とは何者か』(17年、祥伝社)、『新版 北朝鮮入門』(17年、東洋経済新報社、礒﨑敦仁慶応義塾大准教授との共著)など。訳書に『天国の国境を越える』(13年、東洋経済新報社)。

比例区では「与党系」2党が役割分担?

 面白いのは、与党系に見える比例専門政党が他にも一つあることだ。「開かれた民主党」という名称で、与党を離党した著名議員らが主導して結党され、比例名簿上位には文政権の青瓦台で要職にいた人物らがずらりと並ぶ。そして自分たちこそが「文政権を支える核心メンバーだ」と主張するとともに、選挙後には与党と一緒に行動するとアピールするのだ。

 これに対して共に民主党側は、自分たちが支援するのは「共に市民党」であって、「開かれた民主党」ではないと線を引く。混とんとしているようにも見えるが、2つの比例用政党による役割分担だと考えれば素直に理解できる。

 実は、昨年の曺国スキャンダルでは与党支持者の中にも「いくらなんでもひどすぎる」という人が一定数いた。文氏は曺氏の法相任命を強行し、今も擁護するかのような姿勢を見せることに釈然としない思いを抱く人たちは多い。一方で昨年秋に「曺国擁護」を叫ぶ集会に主催者発表で100万人以上が集まったように、曺国イコール文在寅として支持する熱狂的な支持者も多い。この亀裂は与党にとって悩ましい問題だ。

 そこで2つの比例用政党である。与党指導部が主導して作った「共に市民党」は曺氏と距離を置く姿勢を見せ、一方の「開かれた民主党」には曺氏を強く支持する勢力が集まった。進歩派だから文政権支持だけど曺氏については「いくらなんでも」と思う人は「共に市民党」、熱狂的な支持者で曺氏批判を許せないという人は「開かれた民主党」にというわけだ。

 3日発表のギャラップ調査では、比例区で投票する政党として、保守野党の衛星政党・未来韓国党が23%だったのに対して、共に市民党は21%、開かれた民主党は10%。これに与党側がもともと友党だと考える進歩派の正義党が11%だった。無党派層の動きや投票率を加味して同社が推測した比例区の予想得票率を見ると、未来韓国党31%、共に市民党26%、開かれた民主党12%、正義党15%。結局は与党系2党の合計で未来韓国党を圧倒し、さらに友党と言える正義党が地歩を固めるという予想である。

 もちろん新型コロナウイルスが完全に収束したわけではなく、選挙情勢に想定外の影響を与える状況になるかもしれない。さらに感染拡大の状況によっては与野党どちらかの地盤で投票率が極端に低くなり、比例区の得票に大きな影響を与えることも考えられる。そもそも新興宗教教団による集団感染という特殊要因を除くと、韓国での感染は緩やかな拡大が続いている状態であり、特にソウル首都圏について専門家は「感染爆発の一歩手前だ」と警告しており、どうなるかは分からない。

 それに新型コロナの影響で経済が深刻な落ち込みを見せる可能性が高いため、総選挙が与党勝利で終わっても文政権が安泰とは言えない。それでも、保守系紙のベテラン政治記者をして「進歩派のこういう選挙戦術は天才的だ」と言わしめるというのが、現時点での選挙情勢のようだ。

  
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