2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年5月28日

 ワシントン・ポスト5月5日付け社説が、陳光誠事件は、米中協議中のクリントン国務長官が直接取り上げたおかげで、中国側の譲歩を引き出せた。中国に留まったまま人権が尊重される先例とならなかったのは残念だが、米国は、彼が帰国した時にそれが保障されるよう圧力をかけ続けるべきだ、と言っています。

 すなわち、この事件は、クリントン長官が直接中国側高官に対して取り上げた結果、大きな問題となったが、中国側は、米国の選挙年であり、また、中国の指導者交代の時期において、対米関係を悪化させたくないと思っていることが明らかになった。中国指導部はこの問題が大統領選挙戦の争点になるのを避けたかったのだ。

 他方、米政府側は、戦略対話を維持しようとして、問題解決を急いだことは批判されるだろうが、反面、米中戦略対話があったからこそ、中国側の譲歩を引き出せたとも言える。米国は、陳光誠が今後帰国を希望したときは、人権運動家が中国の国内でも安全に活動できるよう圧力をかけ続けるべきだ、と言っています。

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 クリントンが解決を急いだことについて若干否定的なコメントをしつつも、米国の圧力が有効であることに満足している社説です。もっとも、なぜ、クリントンの措置に批判的になるのかはよくわかりません。今回はまだ不明ですが、ワシントン・ポストは、従来は、民主党支持の立場を明らかにしているので、選挙戦中の政治的考慮とも思えません。


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