世界が新型コロナウイルスの蔓延に目を奪われるなか、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」によるテロ活動が依然続いている。
3月25日には、アフガニスタンの首都カブール中心部でシーク教の寺院が襲撃され、30人以上の信徒が死傷する事件が発生し、ISが犯行声明を出している。
その約3週間前の3月6日にも、カブール西部で政治集会が襲われ、約30人が死亡し、約60人が負傷する事件が起きている。襲撃された集会では、シーア派が多数を占める少数民族ハザラ人の政治家アブドゥル・アル・マザリ氏の追悼式典が開かれていた。
ISのアフガニスタンでの活動が活発化したのは2015年からだ。特徴はシーク教徒やヒンドゥー教徒などの非イスラム教の少数派や、イスラム教少数派のシーア派を攻撃対象としている点である。
同国の人口は約3000万人だが、80~90%がイスラム教スンニ派、14%がシーア派で、残る1%がシーク、ヒンドゥー、キリスト教徒である。
アフガニスタンのISは過去数カ月間、米軍・アフガン軍や土着のイスラム過激組織タリバンの攻勢を受け、大きく後退したと見られていた。だが3月入ってのISによる相次ぐ襲撃事件は、依然都市部での攻撃能力を持つことを示す形となった。
ISの攻撃で今ひとつ気になるのが、アフリカ大陸南東部のモザンビークである。同国のカーボ・デルガド州では、エクソンモービルやトタルなどが取りまとめる総額約600億ドルの液化天然ガス(LNG)輸出事業が進められている。
実は同事業現場に近いモシンボア ダプライア町が3月23日に襲撃され、兵士・警官など数十人が死傷する事件が発生しており、直後にISの中央アフリカ部隊が犯行声明を出しているのだ。同部隊は17年10月から同州での攻撃を繰り返しており、その間に数百人が犠牲となっている。
そこで改めて注目されるのが、ISが本年2月の組織報「アル・ナバ」で戦闘員達に発した以下の指示である。
まず、欠伸やクシャミをする際には口を覆うことや、手洗いを励行することなどの細かな注意事項を戦闘員達に説いたあと、裏側の全頁で図も交えて次のように説明している。
- 新型コロナウイルスはウイグルの少数派イスラム教徒を抑圧した中国に対する神の罰である。
- だが世界は相互接続しており、交通手段が病気や伝染病の感染を促進する。
- 戦闘員にはウイルス感染の地である欧州に近寄らないよう勧告する。
この指示の結果が上述した2カ国でのテロ事件であるとすれば、アジア・アフリカ地域は要注意と言えよう。
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